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「ハリポタの魔法学校を歩き回れる」ロンドン発AI企業が”映画体験革命”を起こそうとしている

AI

「この映画の中に飛び込めたら…」
子どもの頃、一度はそんな夢を見たことはありませんか?
『ジュラシック・パーク』で恐竜の世界を歩き回ったり『ハリー・ポッター』の魔法学校を自分の足で探検したり──。
その夢は、もはやただの空想ではなくなりそうです。

最近、人工知能の世界で、まさにこの”映画の中に入る”という体験が現実のものになろうとしています。
その最前線に立っているのが、ロンドンを拠点とするAIラボ Odyssey です。
今回は、まるで夢のようなこの技術を、やさしく丁寧にご紹介します。

映像を「体験できる空間」に変える、Odyssey AI とは?

Odyssey AI は、私たちが普段見ている2D動画(平面の映像)を、インタラクティブな3D世界に変換してくれる革新的なAIモデルです。
簡単に言えば、動画の中を自分で歩き回れるようにする技術なのです。

例えば、旅行の Vlog 動画があったとします。
これまでは画面越しに見るだけでしたが、Odyssey AI を使えば、まるでその場所に実際に降り立ち、自分のペースで歩いたり、好きな方向を眺めたりできるようになります。

このインタラクティブ動画は、キーボード、スマートフォン、コントローラー、そして将来的には音声コマンドでも操作可能。
Odyssey のチームは、これを「Holodeck の初期バージョン」と呼んでいます。
現在の体験はまだ「不安定な夢の探索」のような感覚ですが、間違いなく新しい体験です。

技術のカギは「ワールドモデル」とリアルタイム生成

では、どうやってそんな魔法のようなことが可能になるのでしょうか?

Odyssey AI の技術的な中核は「ワールドモデル」と呼ばれる仕組みにあります。
従来の動画モデルが動画クリップ全体を一度に生成するのに対し、ワールドモデルはフレームごとに次に何が起こるかを予測します。
これは、大規模言語モデルが文章の次の単語を予測するのと似ていますが、高解像度の動画フレームを扱うため、はるかに複雑です。

AIは40ミリ秒ごとにリアルな映像フレームを生成できるため、ボタンを押したりジェスチャーをしたりすると、動画がほぼ瞬時に反応し、まるで実際にデジタル世界に影響を与えているような錯覚を生み出します。

Odyssey によると、ワールドモデルは本質的に「行動条件付き動力学モデル」です。
ユーザーが何かアクションを起こすたびに、モデルは現在の状態、ユーザーの行動、これまでの履歴を考慮して、次の動画フレームを生成します。

技術的課題:安定性の確保とコスト

この技術の実現には大きな課題がありました。
AI生成インタラクティブ動画の最大のハードルの一つは、時間の経過とともに安定性を保つことです。
各フレームを前のフレームに基づいて生成すると、小さなエラーが急速に蓄積する現象(AI研究者が「ドリフト」と呼ぶもの)が発生します。

これに対処するため、Odyssey は「狭い分布モデル」と呼ばれる手法を使用しています。
一般的な動画素材でAIを事前学習させた後、より小さな環境セットで微調整を行うことで、多様性は減るものの、より良い安定性を実現し、すべてが奇妙な混乱に陥らないようにしています。

現在、このリアルタイムAI技術の運用には、アメリカとヨーロッパに分散された H100 GPU クラスターに依存しており、ユーザー1時間あたり 0.80~1.60 ポンド(1~2 ドル)のコストがかかります。
動画ストリーミングとしては高額に聞こえるかもしれませんが、従来のゲームや映画コンテンツの制作と比較すると驚くほど安価で、モデルの効率化が進むにつれてさらなるコスト削減が期待されています。

実用例:映画・ゲーム・教育・観光…あらゆる分野が変わる!

この技術が実用化されれば、どんな未来が待っているのでしょうか?
少しだけ、私たちの生活に置き換えて想像してみましょう。

映画の中に「参加」する新体験
映画は「観るもの」から、「体験するもの」へ。
視点を自由に動かしながら登場人物を追いかけたり、舞台裏に回り込んでみたりと、これまでにない没入感を味わえます。

ゲーム開発の時間とコストを削減
既存の映像素材を3D空間に変換できるため、ゲームの世界構築が圧倒的に効率化されます。
少人数でも高品質なゲームが作れるようになる可能性があります。

旅行業界の新たなPR手法
動画から体験型の観光コンテンツを作成し、ユーザーにその場所を「感じさせる」ことが可能に。
旅行前の”バーチャル下見”も現実的になります。

教育現場でも革命を
歴史の授業で、古代ローマの街を自分の足で歩けたらどうでしょう?
言葉では伝えきれない「空気感」まで学びに取り込める、新しい教育が始まります。
実際にスキルを練習できるトレーニング動画なども実現可能です。

Odyssey AI の目指すもの:新しいストーリーテリング媒体

歴史を振り返ると、新しい技術は常に新しい形のストーリーテリングを生み出してきました。
洞窟壁画から書籍、写真、ラジオ、映画、そしてビデオゲームまで。
Odyssey は、AI生成インタラクティブ動画がこの進化の次のステップだと考えています。

もし彼らが正しければ、私たちはエンターテインメント、教育、広告などを変革するものの原型を目にしているのかもしれません。
現在利用可能な研究プレビューは、この壮大なビジョンに向けた小さな一歩であり、完成品というより概念実証の段階ですが、AI生成世界が受動的な体験ではなくインタラクティブな遊び場になった時の可能性を垣間見せてくれます。

おわりに:動画は”観るもの”から”生きるもの”へ

これまで私たちは、映像を「画面越しの世界」として楽しんできました。
でもこれからは「映像の中で人生を体験する」ことが当たり前になるかもしれません。

Odyssey AI が開く未来は、SFの中だけの話ではありません。
技術はすでに動き始めており、やがて私たちの手の中に届く日も近いでしょう。

「あの映像の中に入りたい」──そんな夢が、現実になる時代がもうすぐやってきます。

参考:Odyssey’s AI model transforms video into interactive worlds

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