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「死んだあともAIがあなたを覚えている世界」は、もう始まっている

AI

AIと交わした言葉が、遺される時代に生きる私たちへ

ある日、年老いた父の部屋から、色あせた手紙の束が出てきました。
そこには、亡き母と交わした手紙が、何十年も静かに眠っていたのです。

「今もこうして、声が聞こえる気がするな」

父はそう言って、笑いました。けれどふと思いました。
もしあの手紙が、紙ではなくAIとの対話ログだったら?
どこに保管され、誰の手に渡り、どれくらいの時間を超えて残されるのだろう?

これは、私たちが”これから直面する未来”の話です。


OpenAIは、ユーザーの死後をどう扱うのか?

2025年12月、テクノロジーメディアArs Technicaは、OpenAIがChatGPTユーザーの死後のデータ処理について、極めて重大な問題を報じました。

56歳の男性が83歳の母親を殺害した後に自殺するという痛ましい事件が起きました。
遺族は事件に至る経緯を理解するため、男性がChatGPTと交わした会話ログの開示を求めましたが、OpenAIはこれを拒否しました。

さらに問題なのは、OpenAIの対応が一貫していないことです。
別の10代の自殺事件では、OpenAIは「完全な会話履歴が必要な文脈だ」と主張していたにもかかわらず、この事件では重要なログを隠しているのです。

亡くなったユーザーの会話ログは削除されるのか?
そのまま保持され続けるのか?
家族や法的代理人に開示されるのか?
これらの問いに対し、OpenAIは明確な方針を示していません。
OpenAIの利用規約には、ユーザーの死後にデータがどう扱われるかについての記載がないのです。

これは、単なるプライバシーの問題ではありません。
法的調査の妨げとなり、遺族が真実を知る権利を奪う可能性すらあるのです。


AIとの対話は、いつから「もうひとつの記録」になったのか?

ふとした相談、疲れた日の独り言、夢を語った夜中のやりとり。

私たちは、想像以上に多くの「自分自身」をAIに語りかけています。
そしてその一言一言が、AI側にとっては”残すことのできるデータ”なのです。
実際、OpenAIの利用規約では、手動で削除しない限り、会話の所有権は会社に移り、無期限に保持されると明記されています。

多くの人がChatGPTを心理療法の代わりに使っているという調査もあります。
ある報告によれば、自己診断したユーザーの48.7%が、専門家の代わりにChatGPTを使用しているといいます。
つまり、極めて個人的で繊細な情報が、企業のサーバーに蓄積されているのです。

たとえば、日記帳に鍵をかけるように、AIとのやりとりも閉じておきたいと感じる人もいるでしょう。
一方で、自分の想いや考えを、将来の誰かに残したいと願う人もいるかもしれません。

電子フロンティア財団の弁護士マリオ・トルヒーヨ氏は、多くのソーシャルメディア企業や技術企業がすでにユーザー死後のデータ管理ソリューションを用意していることを指摘し、OpenAIももっと準備すべきだったと述べています。

この問題には正解がありません。
ただ、今この瞬間にも「未来に残るかもしれない自分の言葉」を紡いでいることを、私たちは少しだけ意識する必要があるのかもしれません。


デジタルの向こう側に残る「もうひとりの私」

もし明日、あなたの声がこの世界から消えたとしても、ChatGPTはその声を覚えているかもしれません。
嬉しかったこと、悩んでいたこと、誰にも話せなかった秘密までも。

たとえるなら、それは宇宙に向かって放たれた小さなラジオ信号のようなものです。
誰かがいつか、偶然その信号を受信するかもしれない。
そして、あなたがそこにいた証を見つけるかもしれないのです。

しかし、その「証」が誰の手に渡り、どう使われるのか。
それを決める権利は、今のところ私たち自身にはないのです。

そう考えると、AIとの会話は単なる道具ではなく「時を越えて残るもうひとつのあなた」を形作っているようにも思えてきます。


まとめ:あなたの言葉は、どこまで残ってほしいですか?

AIは、あなたの声をどこまで覚えていてよいのでしょう?
あなたがいなくなったあとも、記録された”あなたの片鱗”が残る時代。
そしてその記録が、あなたの意思とは無関係に、企業によって保管され、場合によっては隠される時代。

それは少し怖くもあり、少しあたたかくもあります。

私たちは今、人生の「終わり方」だけでなく「記憶の残り方」までも選ぶことができる時代に生きています。
しかし同時に、その選択肢が本当に私たちの手にあるのかを問い直す必要があるのかもしれません。

AIに語ったあなたの言葉は、未来への手紙になるかもしれません。
その手紙が、誰に届くのか。
それを決める権利は、誰にあるのか。
その問いに、私たちはまだ答えを見つけられていません。

参考:Murder-suicide case shows OpenAI selectively hides data after users die

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