「気づいたら Google よりAIに聞いてる」が世界で11億回——検索の常識が静かに変わった瞬間

「ねぇ、AIに聞いてみて？」——その一言が始まりだった
AIが導くウェブの流れ：357％という衝撃の伸び
なぜ今、AIが”入口”になるのか？
恩恵と戸惑い——その裏にある光と影
AIは「検索」じゃない。「相談」なのだ。
まとめ：AIはコンパス、進むのはあなた
1. 最後に一言だけ

「ねぇ、AIに聞いてみて？」——その一言が始まりだった

ある日の夜、友人との会話で、こんな場面がありました。

「今年の夏、どこかおすすめの旅行先ない？」

そう聞くと、彼女はスマホを取り出して、Google ではなく ChatGPT に話しかけたんです。

「家族連れで自然を楽しめる場所、予算10万円以内で教えて」

数秒後、AIは魅力的な場所をいくつか提案し、公式サイトのリンクまで添えてくれました。

私は思いました。

—あ、もう”検索する”ってこういうことになったんだ。

かつて”インターネットの入り口”だった Google が、今では静かにバトンをAIに渡しつつあるのかもしれません。
この変化、実はもう世界中で数字として現れているんです。

AIが導くウェブの流れ：357％という衝撃の伸び

市場調査会社 Similarweb のデータによると、2025 年6月のAIリファラル（AI経由でウェブサイトにアクセスされた数）は、前年同月比で 357％増加しました。
世界のトップ 1,000 のウェブサイトに対して、合計で11.3億回以上、人々が ChatGPT や Google Gemini などのAIからウェブリンクをクリックしたことになります。

ただし、規模感で言えば、同期間に Google は 1,910 億回ものリファラルを生成しており、AIはまだ追いついていません。
それでも、この急増は偶然ではありません。
AIが「調べ物のスタート地点」として、本格的に機能し始めていることの証です。

ニュース、買い物、旅行、教育—AIはあらゆるジャンルにおいて、私たちと情報の”橋渡し役”を担い始めているのです。

興味深いことに、このAIリファラルの 80％以上を ChatGPT が占めているという事実も、ChatGPT の圧倒的な普及を物語っています。
特にニュースメディア分野では、前年比 770％ という驚異的な伸びを見せており、従来のメディア消費パターンが大きく変化していることがわかります。

なぜ今、AIが”入口”になるのか？

このAIリファラルの急増には、3つの明確な理由があります。

1｜情報を”料理”してくれる存在になったから

Google は食材を全部見せてくれます。
でもAIは、それらを一皿の料理にして、テーブルに出してくれるようになりました。
しかも「あなたの好みに合わせて」—これがAIの進化です。

2｜選びやすく、迷わなくなったから

私たちは選択肢が多すぎると、かえって選べなくなります。
AIはその迷いを減らしてくれる案内人。
「これがいいと思うよ」と、頼れる友人のように提案してくれるのです。

3｜視覚的にも分かりやすくなったから

Gemini や ChatGPT は、回答の中にリンク、箇条書き、表などを使い、まるで自分専用の情報ガイドのように見せてくれます。
これは検索とは違う、新しい体験です。

恩恵と戸惑い——その裏にある光と影

この変化で恩恵を受けているのは、信頼性の高い大手サイトです。
たとえば、ニュースメディア分野では、Yahoo（230 万回）、Yahoo Japan（190 万回）、Reuters（180 万回）、The Guardian（170 万回）といったサイトが、AIの回答の中でよく引用され、訪問者を増やしています。

一方で、小規模メディアや広告モデルに依存するサイトは苦戦中です。
AIが記事の要点を伝えてしまうと、全文を読む人が減り、広告収入が落ちるという課題も生まれています。
また、New York Times のように OpenAI との訴訟問題でAIプラットフォームからのアクセスをブロックしているメディアもあり、戦略的な対応が分かれています。

つまり、AIリファラルの増加は、新たな可能性とともに、従来のウェブ経済モデルに揺さぶりをかけているのです。