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「AI時代に通用しない卒業生たち」金融のプロが語る“本当に必要なスキル”とは?

AI

就職したい。
でも、何を学べばいいのか分からない。

「AIがすごいらしい」「データサイエンスが人気だって」――そんな情報だけを頼りに進路を決めようとしている大学生は多いかもしれません。
けれど実際、卒業後に社会で求められるスキルは、大学で学んだことと全く異なっていることがあるのです。

まるで、航海術を学ばずに海に出て、波に呑まれるようなもの。
いま、金融業界の最前線ではそんな”知識のギャップ”が大きな問題になっています。

今回は、量的金融(クオンツ)分野の専門家たちが語った、AI時代に本当に必要とされるスキルと、大学教育のズレについて、分かりやすく解説していきます。

「卒業生はAI時代に備えられていない」—金融のプロたちの本音

量的金融とは、数式やデータを駆使して市場を分析し、投資の意思決定を行う世界です。
AIと非常に親和性が高く、最先端のテクノロジーが次々に導入されている分野です。

にもかかわらず、大学から出てくる卒業生たちは、まるで準備ができていないという声が、業界内から上がっているのです。

CQF インスティテュート(量的金融専門家の世界的ネットワーク)による調査によると、新卒者が業界で成功するために必要なAIと機械学習のスキルを持っていると考える専門家は、わずか10人に1人未満だったとのこと。
この深刻なスキル不足は、量的金融分野における人間の理解と「機械の言語」への習熟の欠如を浮き彫りにしています。
実際「AI対応ができている」と見なされる新卒者はわずか9%でした。

これは決して学生の能力の問題ではありません。
教育カリキュラムが時代に追いついていないのです。
報告書によれば、正式なAIトレーニングプログラムを提供している企業はわずか 14% に過ぎません。

たとえば、授業では「昔ながらの数理モデル」が中心で、機械学習や深層学習(ディープラーニング)などの最新AI技術にはほとんど触れないことが多いのが現状です。
まるで最新鋭のレーザー測定器があるのに、いまだに”物差し”で測っているような状態といえるでしょう。

なぜ、大学と現場の間にこんなギャップが生まれるのか?

このギャップの背景には、教育現場が「変化のスピード」に追いつけていないという事情があります。

AIや量的金融の世界では、毎年のように新しいアルゴリズムやツールが登場します。
一方で、大学のカリキュラムは数年ごとにしか見直されず、更新のタイムラグが致命的になるのです。

実際、調査によると、量的金融の専門家の 83% がAIツールを使用または開発しており、そのうち 31% が機械学習とAIを使用しています。
54% が毎日これらのツールを使用しており、ChatGPT(31%)、Microsoft/GitHub Copilot(17%)、Gemini/Bard(15%)などが人気です。また、18% は深層学習を活用しています。

また、教育者自身が実務経験を持たず、最新の現場感覚を知らないことも多いため、学生が「現場で何が求められるのか」を肌で感じる機会が乏しいのが現実です。

AI活用の実態—現場で何が起きているのか

量的金融の現場では、AIはすでに日常的なツールとなっています。
専門家の 30% がコーディングとデバッグに生成AIを使用し、21% が市場センチメント分析と調査に、20% がレポート作成に活用しています。

また、26% がリサーチやアルファ生成(超過収益の創出)にAIを活用し、19% がアルゴリズム取引に、17% がリスク管理に使用しています。
その結果、44% が生産性の大幅な向上を報告し、25% が週に10時間以上の時間を節約できたと答えています。

ただし課題も残されています。
モデルの説明可能性(AIがどのように結論に達したかを理解すること)が最大の障壁で、41% が主要な懸念事項として挙げています。
また、16% が規制上の懸念を、17% がコンピューティングコストを心配しています。

じゃあ、どうすればいい? これからの学び方とは

では、このAI時代を生き抜くために、学生やこれから学びを深めたい人は、どのように備えるべきなのでしょうか。

CQF インスティテュートのランディープ・ガグ理事は「将来の専門家は、現場ですぐに活躍でき、AIツールが本当に価値を生み出すタイミングを見極められなければならない」と強調しています。

金融専門家たちは、以下のようなスキルが今後ますます重要になると指摘しています。
まず、Python やRなどのプログラミング言語を習得し、数式をコードに落とし込む力を身につけること。
次に、機械学習・深層学習の基礎を理解し、AIと人間の協働を可能にする知識を養うこと。
そして、実データを使った分析スキルを磨き、理論ではなく現実に即した判断力を持つこと。
さらに、倫理的思考力とクリティカルシンキングを鍛え、AIに任せすぎないバランス感覚を育むことです。

これらは、残念ながら「ただ大学の授業を聞いているだけ」では身につきにくい力です。
自主的に学ぶ姿勢や、現場とつながる経験が大切になってきます。

教育も「アップデート」が必要な時代に

この調査を通して見えてきたのは、ただ学生個人が努力すればいいという話ではないということです。
教育のあり方そのものが、AI時代に最適化される必要があるのです。

企業や大学がもっと連携し、リアルな現場の声を教育に反映させる。
インターンシップや産学連携プロジェクトを拡充し、学生が”実戦経験”を積める場を増やす。

実際、変化の兆しも見えています。
25% の企業が正式なAI戦略を確立し、24% が計画を策定中で、23% が今後1年でインフラ予算の増額を見込んでいます。

言ってみれば、知識だけの「座学」から「未来を生きる力」を育てる教育への転換が求められているのです。
量的金融の未来は、従来の数学的専門知識よりも、人間とテクノロジーの協働にかかっているといえるでしょう。

最後に:自分の未来は、自分でアップデートしよう

AIは決して、特別な人だけのものではありません。
ほんの少しの勇気と好奇心、そして継続する意志があれば、誰でもその力を味方につけられる時代です。

「大学では習わなかったから」と諦めるのではなく、むしろ「自分で学べる時代なんだ」とポジティブに受け止めてほしい。
インターネットには良質な教材が溢れ、YouTube やオンライン講座で最新技術を学ぶこともできます。

ガグ理事は最後にこう述べています。
「継続的な教育と革新的な技術を受け入れることが、量的金融の未来を形作るために重要です」

今のあなたの”学ぶ姿勢”が、数年後のキャリアを決める。
自分の未来を、今ここから、少しずつアップデートしていきませんか?

参考:Quantitative finance experts believe graduates ill-equipped for AI future

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