AMAZON でお買物

『万能物理AI』が研究室の常識を破壊 1つのシステムで流体から熱まで予測可能に

AI

膨大な計算の向こう側で起きている革命

スマートフォンで天気を調べるとき、実はその裏でスーパーコンピューターが膨大な計算を行っています。
飛行機の翼をデザインするときも、新素材を開発するときも、同じように膨大な物理シミュレーションが必要です。

でも考えてみてください。
もしも、それらすべてを一つのAIがまるで万能な料理人のように、あらゆる材料(物理現象)を扱えるとしたら?
それが「Physics Foundation Model(PFM)」の目指す世界です。


「専用マシン」から「万能シェフ」への大転換

これまでの物理AIは、あたかも「餃子専用マシン」「ピザ専用マシン」のように、用途ごとに作り直さなければなりませんでした。
流体力学用のモデルは流体しか扱えず、熱伝導のモデルは熱だけ。新しい現象が出るたびに「また新しい機械を作らなければ」となるのです。

そこで研究者たちは、言語の世界で大成功した「ChatGPT」にヒントを得ました。
人間が文章を読み、その文脈から次に来る言葉を推測できるように、物理AIも「これまでの状態」から「次に起こる現象」を推測できるのではないか?

革新的な GPhyT の登場

この発想から誕生したのが General Physics Transformer(GPhyT)
1.8TB もの多様なシミュレーションデータで訓練された GPhyT は、流体の渦や衝撃波、熱の対流といった現象を一つのモデルで再現できました。

さらに驚くべきは「ゼロショット能力」です。
例えば、学習していない境界条件や全く新しい物理現象を与えられても、それらしく答えを導き出します。
これは、まだ見ぬ料理を出されても「味の基本」を知っているシェフが即興で作ってしまうようなものです。

現在の限界と可能性

もちろん完璧ではありません。
長期シミュレーションではまだ誤差が積み重なりますし、対応分野は流体や熱に限定されています。
それでも「万能な物理シミュレーションAI」という未来への扉は、確実に開き始めています。


科学の民主化という壮大な未来図

Physics Foundation Model は、科学の世界における「知恵の共有インフラ」になるかもしれません。
これが実用化されれば、研究室の壁を越え、企業や個人の手元にまで”高精度の物理シミュレーション”が届くでしょう。

つまり――物理の専門家が持つ知識と技を、誰もが呼び出せる時代がやってくるのです。
それは、科学の民主化そのもの。
未来の研究者や技術者にとって、このモデルはきっと「最高の共演者」になるはずです。

参考:Towards a Physics Foundation Model

コメント

タイトルとURLをコピーしました