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『AIなんて要らない』vs『便利じゃん』—図書館アプリ Libby のAI機能を巡って読書愛好家が真っ二つ

AI

「次、何を読もう?」その悩みにAIが答える時代へ

ふとした空き時間、本でも読もうかなと思って Libby アプリを開く。
けれど、膨大な本の海の中で、次に読む一冊を決めるのは意外と難しい。
そんなとき「誰かおすすめしてくれたらいいのに」と思ったことはありませんか?

まさにその「悩み」に応えるべく、Libby が新しく導入したのが、AIによる本の発見機能「Inspire Me」です。
これからはAIが、あなたの気分や興味に合わせて「次の一冊」をそっと提案してくれます。

まるで、いつもそばにいてくれる読書コンシェルジュのように。
でも――この新機能、実は賛否両論を巻き起こしています。

Libby とは? いま注目される図書館アプリ

まず、Libby をご存じない方のために少しご紹介を。

Libby は、米国を中心に利用されている電子図書館アプリ
公共図書館と連携して、無料で電子書籍やオーディオブックを借りられるサービスです。
まるで図書館の「延長コード」のように、自宅や通勤中でも手軽に本に触れることができます。

そんな便利な Libby に、今回AIによるおすすめ機能が加わりました。
まるで Netflix や Spotify があなた好みの映画や音楽を提案してくれるように、Libby も「読者一人ひとりに合わせた本との出会い」を目指し始めたのです。

どんな機能? AIが本を”発見”してくれる仕組み

今回のAI機能「Inspire Me」は、シンプルですが画期的。

ユーザーは Libby のホームページから「Inspire Me」を選択し、まずフィクション(小説)かノンフィクションかを選びます。
その後、年齢層やコンテンツの種類などの要素で絞り込んでいきます。

例えば「背筋がゾクゾクする」「面白い」といった感情的なキーワードを選択したり「現代家族の機能不全を描いた暗いユーモア」や「中世の騎士からドラゴンを救うタイムトラベラー」といった具体的なシナリオを選ぶことができます。

AIは、これらの条件に合致する5つの関連タイトルを表示してくれます。
重要なのは、提案される本はすべてあなたが利用している図書館のデジタルコレクションから選ばれ、すぐに借りられる本を優先してくれることです。

でも、なぜ反発の声が? 図書館の価値観とAIのあいだ

この便利な機能に、すべての人が喜んでいるかというと――そうではありません。

一部の Libby ユーザーや図書館関係者からは、ソーシャルメディア上で次のような懸念の声が上がっています。

  • AI技術を使わずに本の推薦を受けたい
  • AIを使用することによるプライバシーの問題への懸念
  • 図書館アプリにAIが挿入されることへの根本的な反対

たとえば、Amazon や Netflix のおすすめ機能に慣れた私たちは、つい「AIが提案する=正しい」と思い込んでしまいがちです。
けれど、図書館の役割は単なる「おすすめ」ではなく、あらゆる知へのアクセスを平等に保障することにあります。

それは、AIにはまだ真似できない”静かな哲学”のようなもの。
この機能が、そんな図書館の精神を損なうのではないか――という不安があるのです。

プライバシーへの配慮と透明性

こうした懸念を受けて、OverDrive はAIの使用に関する方針文書で詳細な説明を行っています。

同社によると「不要な個人情報」の収集は避けており、個人情報を使用する場合でも、第三者やAIモデルとは共有していません。
また、ユーザーの詳細情報や活動データはAIモデルには渡されません。

さらに、保存されたタグをAIに共有して提案を受ける場合でも、AIが受け取るのは推薦用のタイトルのみで、ユーザーの詳細、デバイス情報、タグの名前や説明は一切含まれません。

AIと図書館、共存への道を探して

OverDrive も反発が予想されることを理解しており、この機能の目標は「人間の洞察」を生成AIで置き換えることではないと強調しています。
むしろ、司書主導の発見を「補完」する役割を果たすとしています。

同社のチーフマーケティングオフィサーであるジェン・ライトマン氏は次のように述べています。
「Inspire Me は、利用者が地元図書館が厳選した素晴らしいコレクションにより深く触れられるよう、責任あるAI統合を活用しています。人間の洞察を置き換えるのではなく、発見をより簡単で、より賢く、より直感的にすることが目的です」

本との出会いに、ちょっとした冒険を

「AIに本を選ばれるなんて味気ない」――そんな声もあります。
れど、考えてみてください。
もしAIが、今まで見逃していた名作や、自分では手に取らなかったジャンルを教えてくれたら?
それはきっと、新しい自分と出会うきっかけになるかもしれません。

図書館の役割が「本を借りる場所」から「本と出会う体験の場」へと進化しようとしている今。
Libby のAI機能は、その入り口にすぎません。

だからこそ、こうした変化を一方的に受け入れるのではなく、私たち自身が読書体験をどう育てたいかを考える
そんな時間を持つことこそが、きっとこれからの「読書」の未来を豊かにしてくれるのではないでしょうか。

さいごに:AI時代の読書とは?

「Inspire Me」機能は、8月にソフトローンチされ、9月にはすべての Libby ユーザーがアクセスできるようになる予定です。

本を開くという行為は、時に人生のかじ取りを変えてしまうほどの力を持っています。
Libby のAI機能は、その「出会いのチャンス」を広げてくれるもの。

でも、その選択肢の海で本当に必要な一冊を選ぶのは、いつだってあなた自身です。
AIの提案に耳を傾けつつ、自分の感性にも従ってみてください。

読書は、AIに任せるものではなく、一人ひとりが自由に楽しむ冒険だから。

参考:Libby’s library app adds an AI discovery feature, and not everyone is thrilled

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