「えっ、AIってもう指示しなくても動くの?」
「AIに『これやって』って指示するのも面倒くさいと思ったこと、ありませんか?」
たとえば、営業資料を作りたいとき。
AIに一つひとつ「このデータをまとめて、次にグラフを作って、表紙を整えて…」と細かく頼むのは、正直しんどい。
でも、もしAIがあなたの意図を理解して、自動で必要な作業を判断して動いてくれたら──。
そんな”気の利くAI”が、もう現実になろうとしています。
エージェント型AIとは? ただのチャットボットじゃない
「エージェント型AI」とは、人の代わりに目的達成までを自律的に考え、行動してくれるAIのこと。
例えるなら「あなたの分身となって働く秘書AI」です。
これまでのAIは「質問に答える」「翻訳する」といった1回きりのやりとりが中心でした。
しかし、エージェント型AIは、目的に向かって複数のステップを自分で設計し、必要なツールを使いながらタスクを完遂してくれるのです。
たとえば、顧客から届いたメールを読み取り、内容に応じて適切な提案文を作り、さらに CRM(顧客管理システム)に登録するといった一連の業務を、指示なしに”いい感じに”やってくれる。
そんな世界がすぐそこまで来ています。
Amazon Bedrock AgentCore × Claude が描く、次世代AI基盤
Amazon は、このエージェント型AIを実現するための強力なツール群をリリースしました。
1. Amazon Bedrock:AIの「土台」
Amazon Bedrock は、さまざまなAIモデルを簡単に使えるようにしたサービス。
プログラミングの知識がなくても、強力な生成AI(LLM)を使える環境を提供しています。
ここに登場するのが Anthropic 社の Claude というAI。
ChatGPT に似た会話型AIですが、より高度な”文脈理解力”を持っています。
2. Claude:繊細な理解と判断ができるAI
Claude は、読みやすく構造化された情報を処理するのが得意で、数万トークン(数十ページ相当)の文書も理解可能。
つまり、大量の社内ドキュメントやマニュアルを一瞬で読み解き、そこから最適なアクションを導く力を持っているのです。
特に Claude Sonnet 4.5 は、長時間の自律的なタスク実行に優れ、数時間から数日にわたる複雑なワークフローでも一貫したパフォーマンスを維持できます。
コーディングや推論タスクで最先端のパフォーマンスを発揮し、金融分析、研究ワークフロー、サイバーセキュリティなど、幅広い企業ユースケースに対応しています。
3. Amazon Bedrock AgentCore:AIの”行動力”を支える心臓部
Amazon Bedrock AgentCore は、Bedrock 上で動くエージェントの設計と実行を担う包括的なエージェントプラットフォームです。
AgentCore は複数のフルマネージドサービスで構成されており、Runtime(実行環境)、Memory(記憶機能)、Identity(認証管理)、Gateway(API統合)、Code Interpreter(コード実行)、Browser Tool(ブラウザ操作)、Observability(監視機能)といった機能を提供します。
これらを組み合わせることで、AIが「状況を理解し、必要な情報を取得し、最適な行動を選ぶ」──まるで人間のような仕事の進め方を再現できるのです。
AgentCore の最大の特徴は、開発者がインフラ構築に時間を取られることなく、エージェントのロジックとビジネス価値の創出に集中できる点です。
セッション管理、認証情報の保管、ツールのオーケストレーション、スケーリングといった複雑な基盤部分を自動で処理してくれます。
こんな活用例、もう始まってます
では実際に、どんなビジネスで使われているのでしょうか?
事例1:Cox Automotive──17の本番環境プロジェクトを展開
世界最大の自動車サービス・テクノロジー企業である Cox Automotive は、Amazon Bedrock AgentCoreとClaude を活用し「データファースト、AI活用」から「AIファースト、データで差別化」へと戦略を転換しました。
現在、17の主要な概念実証プロジェクトが本番環境で稼働し、7つの業界変革ソリューションが開発中です。
オムニチャネルのディーラー体験を向上させる仮想アシスタントから、車両検索と購入を効率化するエージェント型マーケットプレイスまで、幅広い用途で活用されています。
Cox Automotive は、レイテンシー、コスト、精度という3つの重要な指標において Claude の優れたパフォーマンスを評価し、AgentCore の安全なデプロイメント、監視、認証、エンタープライズグレードの基本機能を活用することで、企業全体でのAIスケーリングを効率的に進めています。
事例2:Druva──最大 63% の自律的解決、最大 58% の高速化
サイバーセキュリティ企業の Druva は、7,500 以上の顧客を抱え、それぞれが独自のインフラパターン、脅威の状況、セキュリティ要件を持つという課題に直面していました。
手動での脅威調査は、複数のダッシュボード、ログ、アラートをナビゲートする必要があり、膨大な時間がかかっていました。
Druva は AWS Generative AI Innovation Center と提携し、Amazon Bedrock AgentCore 上の Claude を活用したマルチエージェントシステム「DruAI」を構築。
複数のAIエージェントが協力して、数百のツールから適切なものを自動的に選択し、テレメトリー分析、脅威調査、修復を処理します。
AgentCore Runtime は、安全で分離された実行環境と自動スケーリングを提供し、Druva のチームは複雑なセキュリティインフラの構築と維持ではなく、顧客価値の提供に集中できるようになりました。
その結果、3,000 以上の顧客と 10,000 人のユーザーが DruAI を利用し、解決時間が最大 58% 短縮され、顧客の問題の最大 63% が人間の介入なしに解決されています。
サイバーセキュリティにおいて、このスピードは封じ込められた脅威とビジネスに影響を与える侵害の違いを生み出します。
AIが”部下”になる時代へ
従来のAIが「電卓」や「自動翻訳機」だったとすれば、エージェント型AIは「信頼できる若手社員」のような存在です。
言われたことをやるだけではなく、状況を読み取り、判断し、最適な行動をとる。
そんなAIが、日々の業務を支え、ビジネスの成長を加速させてくれる。
すでに一部の企業では、AIが「1人分の戦力」として数えられ始めています。
McKinsey の調査によると、エージェント型AIは 2030 年までに年間 4,500 億ドルから 6,500 億ドルの追加収益を生み出す可能性があり、これは業界全体で 5~10% の収益増加に相当します。
最後に:AIとの”新しいチームワーク”を始めよう
私たちは、AIに命令する時代から、AIと共に働く時代へとシフトしています。
Amazon Bedrock、Claude、Amazon Bedrock AgentCore──これらは単なるツールではなく「新しい働き方のパートナー」です。
これからのビジネスは、どれだけ”優秀なAI”と”上手に協力できるか”がカギになります。
「AIに仕事を取られる」のではありません。
AIに仕事を”助けてもらう”のです。
さあ、あなたもAIとのチームワークを始めてみませんか?
参考:Amazon Bedrock AgentCore and Claude: Transforming business with agentic AI
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