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なぜAIは会話の途中で混乱するのか? Microsoft と Salesforce が解明した「AIが迷子になる」驚きの真実

AI

―あなたとAIの対話がうまくいかない本当の理由―


あの日、AIとの会話で感じた違和感

「ちょっと手伝ってほしいんだけど」――そんなふうに気軽に話しかけたAIとの会話が、気づけば何度も同じ説明を繰り返していた……そんな経験はありませんか?

たとえば、仕事で使うちょっとした自動化スクリプトをお願いしたときのこと。
最初に大まかな要望を伝えると、AIはすぐにコードを書き始めてくれました。
しかしそのコードには、こちらが想定していた条件の一部が含まれていません。
そこで条件を補足して伝えると、今度はそれを加味した新しいコードが返ってきます。
けれども、また別の要素が抜けていたり、意図が食い違っていたりして、何度やり直しても完璧にはたどり着けない。
次第に、まるで迷路の中で出口を探しているような気分になってきます。

この”通じているはずなのに、通じていない”感覚。
どうして起こるのでしょうか?


実験で明かされた「AIは会話で迷子になる」という現象

この謎に対して、Microsoft と Salesforce の研究チームが興味深い答えを示しました。
彼らが 2025 年に発表した論文『LLMs Get Lost in Multi-Turn Conversation』では、15種類もの最先端の大規模言語モデル(LLMs)を対象に、1回で要件を伝える「シングルターン」と、少しずつ情報を追加していく「マルチターン」という2つの状況で性能を比較しました。

その結果、驚くべき事実が明らかになります。
マルチターン形式になると、あらゆるモデルでパフォーマンスが大きく下がり、平均して約 39% もの性能低下が見られたのです。
しかもこの傾向は、GPT-4o や GPT-4.1 のような高性能モデルでも例外ではなく、どのモデルも等しく”会話で迷子になる”という結果に至りました。

つまり、どんなに賢いAIであっても、少しずつ話を進めると道を見失ってしまう――そんな、ちょっと意外で、少し切ないような事実が浮かび上がってきたのです。


なぜAIは「迷子」になるのか? その理由とは

では、なぜAIは会話の中で迷ってしまうのでしょうか。
研究チームの分析によれば、その背景にはいくつかの要因がありました。

【理由1】早すぎる仮定

AIは会話の序盤で不完全な情報をもとに、早い段階で”こういうことだろう”と仮定し、結論じみた回答を提示してしまう傾向があります。
たとえるなら、道案内をお願いしたのに、まだ聞いていない道の先まで「たぶんこっちでしょう」と進み始めてしまうようなものです。

【理由2】軌道修正の困難さ

困ったことに、いったん間違った方向に進んでしまうと、その後に正しい情報を与えても軌道修正がうまくできない。
過去の自分の答えを引きずりすぎるのです。
こうして、間違った前提のもとに繰り返されるやり取りは、どんどん混乱を深めていきます。

【理由3】冗長な回答による混乱

AIは”真面目”すぎるあまり、丁寧で長い回答を返すことがあります。
この冗長さが逆に情報の焦点をぼやけさせ、自らが混乱する原因にもなっているのです。


どうすれば、AIを迷子にさせないのか?

この現象に対して、研究は実践的なヒントも教えてくれます。

✅ 効果的な対策1:情報をまとめて伝える

会話を始めるときにできるだけ多くの情報を一度に伝えること。
たとえば「こういうものを作ってほしい。こういう条件があって、こういう制約もある」と最初から全部まとめて伝えるだけで、AIの性能は劇的に向上します。

✅ 効果的な対策2:会話をリセットする

もし途中で会話が噛み合わなくなったと感じたら、無理にそのまま続けるよりも、新しいチャットを開いて仕切り直す方が、はるかに良い結果につながる場合があるのです。
言い換えれば、AIとの会話は”引きずらないこと”が、良い関係を保つ秘訣とも言えるかもしれません。


それでも私たちは、AIとの会話を続けていく

今回の研究は、AIがまだ”完璧な対話相手”ではないことを教えてくれました。
しかし、それは決して悲観すべきことではありません。
むしろ、今のAIにはまだ人間のような”勘違い”や”思い込み”があるのだとすれば、私たちの側も、より良い言い方や伝え方を見つけていくことで、協力関係はもっと深まっていくはずです。

LLM は会話の中で迷子になる――でも、その迷子に地図を渡してあげるのは、私たち人間の役割かもしれません。


AIとの対話は、決して直線的なやり取りではありません。
ときにはすれ違い、ときには遠回りをしながらも、少しずつ理解を重ねていくプロセスです。
私たちはまだ、AIとの”本当の会話”の始まりに立っているにすぎません。

だからこそ、今日から少しだけ意識を変えてみませんか?
AIに話しかけるその「最初のひとこと」が、未来の可能性を大きく広げる第一歩になるかもしれないのです。

参考:LLMs Get Lost In Multi-Turn Conversation

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