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今の法律、AI時代に通用するの?イギリスの報告書が出した“意外な結論”とは

AI

ある日、あなたがAIによる医療診断を受けるとしましょう。
診断結果は間違っていて、そのせいで治療が遅れた。
では、その責任は誰が取るべきでしょう?

AIを開発した企業?
それを使った病院?
あるいは、AIそのもの?

この問いに明確に答えられる法律は、いまのところ存在しません。

そして、こうした”答えのない状況”が、私たちの社会でこれからますます増えていくのです。
なぜなら、AIはすでに金融、教育、医療、法務、さらには日常生活のあらゆる場面に入り込みつつあるからです。

では、今ある法律でAI時代を乗り切れるのでしょうか?

今回は、その疑問にまっすぐ答えてくれたイギリス法曹協会の見解について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

現行法でAIを扱える? イギリス法曹協会の見解とは

イギリスの科学・革新・技術省(DSIT)が最近、「AIグロースラボ」という新たな規制緩和策の提案を行いました。
これは、企業に対して「期限付きの規制免除」を与えることで、AI技術の導入を加速させようという試みです。
政府の試算によれば、2030年までに国民経済に1,400億ポンドもの経済効果をもたらす可能性があるとされています。

しかし、この提案に対してイギリス法曹協会(The Law Society of England and Wales)は明確な立場を示しました。
「現在の法律でも、AI技術の活用に十分対応できる」と。

この回答が示しているのは「規制を緩和する必要はない。必要なのは、既存の法律をどう適用すべきかの明確なガイダンスだ」という、いわば冷静な判断です。
実際、イギリスの弁護士の3分の2はすでにAIツールを活用しているといいます。

法曹協会のCEOであるイアン・ジェフリー氏は次のように述べています。
「AI革新は法律業界にとって不可欠であり、すでに大きな勢いがあります。既存の法的規制枠組みは進歩を支えています。主な課題は規制の負担ではなく、AIの採用に関連する不確実性、コスト、データ、スキルにあるのです」

特に注目すべき課題として挙げられているのは、責任の所在があいまいであること、AIが誤作動したときに誰が責任を取るのか明確でないこと、AIによる差別的な判断への対応、そして個人情報の取り扱いにおける既存のプライバシー保護法の妥当性といった点です。

このような課題は、もはや机上の空論ではなく、すでに私たちの生活の中に入り込んでいる問題なのです。

例えるなら「古い設計図で未来の都市をつくるようなもの」

今の法律でAI社会を運営するのは、たとえるなら昭和の設計図で令和のスマートシティをつくろうとしているようなものです。

確かに基本の構造は使えるかもしれない。
でも、電動キックボードも自動運転車も想定していない道路設計では、トラブルは避けられません。

同じように、AIに対応できる法律とは「いまあるものをそのまま使う」のではなく「必要な部分はアップデートしていく」姿勢が求められているのです。
ただし法曹協会が強調するのは、その方向性は規制緩和ではなく、むしろ明確化であるという点です。

弁護士たちが直面している実務的な疑問は具体的です。
クライアントのデータをAIプラットフォームに入力する前に匿名化する必要があるのか?
データのセキュリティと保管について標準化されたプロトコルは?
AIツールが有害な法的助言を生成した場合、責任は弁護士、法律事務所、開発者、保険会社のどこにあるのか?
そして、AIの活用に際して人間の弁護士による監督は常に必要なのか?

法律とAIの”対話”が始まっている

法曹協会は、技術の進歩が消費者保護を損なうことがあってはならないと警告しています。

「法律業界における技術の進歩は、クライアントや消費者を規制されていないリスクにさらすべきではありません」とジェフリー氏は述べています。
「現在の専門職の規制は、クライアントと公衆を保護するために議会が不可欠と見なした保護措置を反映しています。これは世界中でイングランドとウェールズの法制度への信頼を保証するものです」

AIのアルゴリズムはブラックボックスになりがちで、何がどう判断されているのか、技術者でさえ説明できないこともあります。
これを”法の言葉”に翻訳し、私たち市民に理解できる形にすること。
その橋渡し役が、まさに法律の仕事になってくるのです。

AIが勝手に暴走しないように、でも、その可能性を無駄にしないように。
その絶妙なバランスを取るためには、法律がAIときちんと向き合うことが欠かせません。

法曹協会は「法律サービスのサンドボックス」への協力は惜しまないとしていますが、それは専門職の基準を維持するものでなければならず、それらを迂回するものであってはならないと強調しています。

まとめ 「法律もまた進化するべき技術である」

AIの進化が止まらない今、私たちが立ち止まって考えるべきなのは「どんな未来をつくるか」ではなく「その未来に、どんなルールが必要か」という問いです。

法律とは、社会が自分たちの価値観を形にした”設計図”です。
AIという新たなプレイヤーが登場した以上、その設計図も、未来にふさわしいものへとアップデートされていく必要があります。
ただし、そのアップデートは性急な規制緩和ではなく、慎重な明確化と対話によってなされるべきなのです。

「法律は時代遅れかもしれない」

そんな漠然とした不安を抱えるすべての人にこそ、今回の法曹協会の見解は「今の法律も、まだ捨てたものじゃないよ。必要なのは、それをどう使うかの明確なガイドなんだ」と、静かに語りかけているように感じました。

AIと法律、その”対話のはじまり”を見守ること。
それが、これからの私たち一人ひとりにできる大切な一歩なのかもしれません。

参考:The Law Society: Current laws are fit for the AI era

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