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年間 75,000日 分の仕事をAIに丸投げ!──政府の新ツール『Consult』が行政を変える

AI

「それ、本当に人間の判断ですか?」

たとえば、あなたが市役所に「保育園の入園申請」を出したとします。
数週間後、結果が届きました。
「残念ながら…」という文面に少し落ち込む。
でもふと疑問が湧きます。
「これ、誰がどうやって決めているんだろう?」と。

もしかすると、その答えは”人間”ではなく”AI”かもしれません。

今回は、そんな未来がすぐそこまで来ているというニュースを元に「AIと行政の意思決定」というテーマをわかりやすく、そして少しドラマチックにご紹介します。

AIで行政スピードが劇的アップ? 英国の最新事例

イギリスで最近注目されているのが、政府が使う「Consult(コンサルト)」というAIフィードバックツールの導入です。
これは「Humphrey(ハンフリー)」と呼ばれるより大きなAIツールキットの一部です。

このツールは、国民から集めた意見やパブリックコメントをAIが読み取り、要点を整理し、政策立案者にフィードバックするというもの。
たとえば何百ページにもわたる市民の意見を、わずか数分で「主な関心事」や「反対理由」としてまとめることができるのです。

まるで、何百人分の会話を聞いて、瞬時に「みんなの総意」を提示してくれるスーパー秘書のような存在です。

このおかげで、政策決定のスピードが飛躍的に向上することが期待されています。
実際、スコットランド政府ではすでに試験運用が行われ、非外科的美容処置(リップフィラーやレーザー脱毛など)の規制に関する 2,000 人以上からの意見を分析するのに活用されました。
政府は年間約 500 のコンサルテーションを実施しており「Consult」の活用により年間で驚異的な 75,000 日分の分析時間を節約できる可能性があるとされています。

専門家が「待った」をかける理由

しかし、技術の進化には”光”だけでなく”影”もあります。

多くの専門家たちが「このAIツールを過信すべきではない」と警鐘を鳴らしています。
Datactics 社の CEO、Stuart Harvey 氏は「AIはそれを支えるデータの質に依存する」と指摘し「信頼性のある決定のためには、データが正確で最新かつ適切に管理されていることが不可欠」と強調しています。

また、エディンバラ大学の Michael Rovatsos 教授は、AIバイアスのリスクや、これらのツールが操作される可能性についても警告しています。
AIが”文脈”や”感情”を正確に理解できるとは限らないのです。

たとえば、AIが「この意見は少数派だから重要度が低い」と判断したとします。
でも実際には、その意見こそがマイノリティの切実な声であり、最も配慮すべき内容だった…という可能性もあるのです。

「大量の意見を効率よく処理できる」のはAIの強みですが「目の前の一通の手紙に心を寄せる」ことができるのは、やはり人間だけなのかもしれません。

便利さと慎重さ、どちらも手放してはいけない

AIは確かにすごい道具です。
でも、それはあくまで「道具」であって「最終判断を下す存在」ではないのです。

これは、車の自動運転に似ています。
アクセルを踏めば早く着きます。
でも、ブレーキを踏む判断が遅れれば、取り返しのつかない事故になります。

つまり、AIという「アクセル」と、倫理や慎重さという「ブレーキ」の両方がバランスよく機能して初めて、私たちは安心して未来へ進むことができるのです。

AND Digital の Stuart Munton 氏は「AIツールが最大限の効果を発揮するためには、公共部門のチームに適切なスキルとトレーニングを提供することへの投資が必要」と指摘しています。
人間とAIの協働が重要なのです。

まとめ:AIに任せる前に、私たちが問うべきこと

「AIが判断した」と聞いて、あなたはそれをそのまま信じられますか?

これからの時代、私たちは「早くて便利な行政」を求める一方で「誰が、何を基準に、どう判断したのか」という”透明性”や”人間らしさ”も大切にしなければなりません。

英国政府は 2025 年末までに様々な部門でこの「Consult」を導入する計画を進めていますが、運用にあたっては、AIに任せるのではなく、人間が常に監視役として関わり続ける設計になっています。

もし、あなたの人生に関わる大切な決定が、AIによって下されるとしたら──そのAIに、あなたの想いはちゃんと届いているでしょうか?

参考:AI tool speeds up government feedback, experts urge caution

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