「これはいつまで続くのかな…」
35歳を越えた頃、多くの女性がふとこんな想いを心のどこかでよぎるようになります。
子供を欲しいと願う人も、そうでない人も、自らの体の変化に気づき始める時期です。
閉経までの時間をどう生きるかは、人生をどう歩むかにも深く結びついています。
そんな中、一本の研究が導いてくれるのは、正しく知り、それをうまく生かすための指針としての「目」の姿です。
この研究で分かったこと
2025 年に発表された研究では、AIを用いて目の写真から年齢を推定し、それが実際の年齢とどれだけずれているかを表す「網膜年齢ギャップ」に着目しました。
このギャップが小さい人ほど、卵巣予備能の指標となる抗ミュラー管ホルモン(AMH)の値が高く、妊孕性が高い傾向にあります。
すなわち、網膜年齢ギャップは「体の中の若さ」を表す指標となるのです。
なかでも、特に40代から50歳の女性でその相関性が高く、網膜年齢ギャップが1年分余計に上回っていると、AMH が低い確率が高まるという結果が出ています。
具体的には、40代前半の女性では網膜年齢ギャップが1年増えるごとに AMH 低値のリスクが 12% 増加し、45歳から50歳の女性では 20% 増加することが示されました。
これは、いわば「目の写真から、その人の生殖機能の状態を間接的に推測できる」というドラスティックな知見です。
「ただの目の写真」に隠されたヒント
なぜ目の写真が、生殖機能の指標になるのでしょうか。
それは目の本質によります。
目の網膜にある広範囲な血管系は、人の全身の血流状態と相関しています。
そのため、血管の老化は即ち、網膜の変化にも表れやすいのです。
AMH レベルの低下に伴い、エストロゲンやプロゲステロンなどの性ホルモンが減少し、これらのホルモンは網膜を保護する作用があるため、その減少が網膜の老化を加速させると考えられています。
ここにAIを用いると、肉眼では捉えられない細かな変化も推定できるようになりました。
その結果が「網膜年齢ギャップ」なのです。
実際、モデルの解析により、視神経周辺の血管領域が年齢推定において最も重要な特徴であることが明らかになりました。
もっと言えば、目は「全身の見えない機能的老化をそっと告げてくれる窓」なのです。
生殖に関わる要因との関連
研究ではさらに、出産回数や初産年齢も AMH レベルと関連していることが示されました。
出産回数が多いことや初産年齢が若いことは、AMH 低値と関連していました。
特に30代から39歳の女性において、初産年齢を1年遅らせることで、AMH 低値のリスクが9%から 16% 減少することが確認されています。
また、閉経時期との関連も見られ、網膜年齢ギャップが大きい女性ほど早期に閉経を迎える傾向があることが分かりました。
網膜年齢ギャップが1年増えるごとに、45歳未満で閉経するリスクが 36% 増加することが示されています。
遺伝的な裏付けも発見
この研究では、遺伝子解析も実施されました。
その結果、プロゲステロンによる卵母細胞成熟経路やオキシトシンシグナル伝達経路など、生殖機能に関わる遺伝的経路が網膜年齢と関連していることが明らかになりました。
さらに、心血管系の健康に関わる経路も特定され、血管の老化が網膜と卵巣の両方に影響を与えている可能性が示唆されています。
メッセージ:「目から知る未来」
わたしたちは、自分の体の変化に気づくとき、何かしらの痛みやサインを通じて理解します。
しかしそれよりもずっと早く、目はそっと体の変化を示しているのです。
網膜写真とAIという簡単で非侵襲的な手段で、その変化を解析し、将来の健康状態を知る。
それは「もしも」のための準備であり「これから」を生きるための選択肢を得るための情報なのです。
目には、体が表れます。
それを解読できる時代が、始まりました。
参考:Artificial intelligence-derived retinal age gap as a marker for reproductive aging in women
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