ある日突然、大切な人が言葉を失い、動けなくなる。それが「脳卒中」です。
この病気は、時間との闘いです。発症から治療までの数分、数秒が、その人の人生を左右する。
でももし、その「数分」を短縮できる魔法のような技術があったとしたら?
今回は、実際にイギリスの医療現場で起きた”奇跡”とも言える変化をご紹介します。
その鍵を握ったのは「AI(人工知能)」でした。
人の目では間に合わない。そのギャップをAIが埋めた
脳卒中の中でも特に危険なのが「大きな血管」が詰まるタイプのもの。
この場合、有効な治療として「血管内治療(血栓除去術)」があります。
詰まった血管にカテーテルを通して血栓を取り除く、非常に高度な処置です。
けれど、この治療には厳しい”時間制限”があり、発症から数時間以内に正しく判断し、専門病院に移送しなければなりません。
しかし多くの病院では、専門の脳神経放射線科医が常駐しているわけではありません。
CTやMRI画像を迅速かつ正確に読み取るのは、簡単なことではないのです。
この”読み取りの壁”を突破したのが「AI画像診断支援ソフト」でした。
英国で実証されたAIの力:数字が物語る変化
2019年から2023年にかけて、イギリスで行われた5年間にわたる大規模な研究では、全国107の病院データを用いて、AI導入前後の治療状況を徹底的に比較しました。
この研究結果は2025年に発表されています。
特に注目されたのが、Brainomix 360 StrokeというAIソフト。
CT画像などを自動で解析し、血管の詰まりや脳のダメージ具合を瞬時に可視化してくれます。
驚きの成果として、まずAI導入病院では血管内治療の実施率が2倍に増加しました(2.3%から4.6%へ)。
さらに、AIを使った患者のほうが治療に至るまでの病院間移送時間が平均64分短縮されました(中央値で128分対192分)。
加えて、退院時の障害レベルが軽くなる傾向も見られ、mRSスコア(障害度を測る指標)が有意に良好という結果が出ています。
これは、単なる技術導入ではありません。
まさに「命をつなぐAI」の実証だったのです。
AIは万能?いいえ、だからこそ人の手が必要
もちろんAIは魔法ではありません。
画像を送らないと解析されない、使い方を知らなければ意味がない、といった現場の課題も明らかになりました。
実際、AIソフトがあっても使われなかったケースでは、移送の遅れや治療率の低下が見られたのです。
「技術と人」の連携があってこそ、AIはその真価を発揮します。
「もっと早く届けられていれば」を、なくすために
この研究が教えてくれたのは「早く、正しく、つなぐ」ためにAIは非常に有効だということ。
それも、都会の大病院だけではなく、地方の小さな病院でも活躍できる点が、希望を広げています。
AIは、人を超えるのではなく、人を支える存在として進化しています。
最後に:未来は、もう始まっている
脳卒中のような「一刻を争う」病気において、AIの導入は単なる効率化ではありません。
それは「命の選択肢」を広げることにつながるのです。
この記事を読んでくださったあなたが「AIってすごいな」だけでなく「もしものとき、どうすればいいのか」という問いを心に留めてくれたなら。
それこそが、未来の医療にとって、最も力強い一歩になるのかもしれません。
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