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腎臓が壊れる前に気づける? たった6つのデータで命を救うAI「REACT」とは

AI

「手術は成功です。ただ…」

これは、とある心臓外科手術を終えた患者の家族に医師が告げた言葉です。

手術自体は問題なかった。
ところが、術後数日してから急に腎臓の機能が落ち始め、患者は急性腎障害(AKI)に苦しむことに。
適切なタイミングで対応していれば回避できたかもしれない。
そんな悔やみが現場にはいくつも残っています。

心臓手術後に起こる「CSA-AKI(心臓手術関連急性腎障害)」は、患者の命を左右する重大な合併症です。
その発症は珍しくなく、なんと心臓手術患者の約3人に1人が影響を受け、死亡リスクを2倍から8倍に高めると言われています。

けれど、問題は「早く気づけない」ことにあります。

数時間の差が、生死を分ける

従来、AKIの診断は「血清クレアチニン値の上昇」を基準にしてきました。
しかしこれは、腎臓のダメージが進んだ後に現れるサインです。
たとえるなら、家が半壊してから火災報知器が鳴るようなものです。

しかも、これまで使われてきたリスクスコアや統計モデルは、その正確性や応用範囲に限界があり、患者ごとの微妙な体調変化をうまく捉えられませんでした。

そんな中で生まれたのが「REACT」という名のAIモデルです。

AIは「なぜ起こるか」に踏み込める時代へ

「REACT(Real-time Evaluation and Anticipation with Causal Distillation)」は、単なるAIではありません。

従来のAIが得意としていたのは「相関」、つまり「この人はAKIになるかもしれない」という予測でした。
しかしREACTは一歩踏み込み「この変化が、AKIの原因である可能性が高い」という因果関係を見極める力を持ちます。

これは、AIがまるで医師のように「なぜこの患者は悪くなるのか?」を考えるようになった、と言っても過言ではありません。

たった6つの指標で、1万3千以上のデータを超える予測精度

REACTが驚異的なのは、1,328種類の膨大なデータから、わずか6つの因果変数だけを選び抜き、予測に活用している点です。

その6つとは、年齢、血清クレアチニン、血中尿素窒素(BUN)、尿酸、乳酸脱水素酵素(LDH)、クレアチンキナーゼMB(CK-MB)です。

一見すると、どこの病院でも測定可能な、ごく普通の項目ばかり。
しかし、これらの組み合わせと変化の仕方に注目することで、REACTは、AKIの兆候を誰よりも早く察知するのです。

実際にREACTを使った結果は?

REACTは、14,513人の手術患者データを元に開発され、さらに中国国内外の合計63,349人以上の患者で検証されました。

その結果、一般的な方法より平均16.35時間も早くAKIを検知し、重症AKIの93.8%を正確に予測することができました。
たった6つのデータ入力で、既存のAIモデルをすべて上回る精度を記録しています。

中国国内の複数施設に加え、アメリカのMIMIC-IVやeICUといった国際データベースでも高い汎用性を証明しました。

しかもこのモデル、既に医療現場向けのWebアプリやモバイルアプリとして公開されており、医師たちの「第六感」を支えるツールとして使われ始めています。

「命を救う16時間」は、あなたの病院にも届く

この研究の素晴らしいところは、AIをただのハイテクとして見せるのではなく「日常の医療現場で、無理なく使える道具」として設計されている点です。

小さな地方病院でも、必要なのは基本的な血液検査と年齢だけ。
あとはREACTが、患者の未来を読み解いてくれます。

まるで、ベテラン医師が「この患者は、近いうちに腎臓の調子を崩すぞ」と直感するかのように。

おわりに AIは人間の「感」を補うパートナー

医療の世界は、日々進歩しています。でも、どれほど進んでも「あと少し早く気づけたら」という後悔がなくなることはないかもしれません。

だからこそ、REACTのような仕組みが、医師と共に命を守るパートナーとして存在することは、これからの医療にとって欠かせないのです。

あなたの身近な病院に、このAIが導入される日も、そう遠くはないかもしれません。

参考:Causal deep learning for real-time detection of cardiac surgery-associated acute kidney injury: derivation and validation in seven time-series cohorts

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