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買い物って、ここまで進化してたの?ChatGPTとInstacartが描く“考えなくていい”買い物体験

AI

たとえば、冷蔵庫を開けて「今夜は何を作ろう?」と悩んでいたとします。
そのとき、誰かがそっと現れて「こんなレシピはどう? 材料もすぐに届けられるよ」と提案してくれたら、どうでしょうか?

そんな夢のようなシーンが、いよいよ現実になろうとしています。

「エージェンティック・コマース」ってなに?

今回の主役は、米国の大手食料品配達サービス「Instacart(インスタカート)」と、対話型AIの代表格「ChatGPT」です。

Instacartは、「エージェンティック・コマース・プロトコル(Agentic Commerce Protocol)」を活用して、ChatGPT内に組み込み型のチェックアウト体験を展開しました。
これは単なる「連携」ではありません。
「エージェンティック・コマース」という新しい買い物の形を模索しているのです。

エージェンティック・コマースとは、AIが買い物の代理人として、ユーザーのニーズに応じて考え、提案し、手配までしてくれる購買体験のことです。
まるで、自分専用の買い物コンシェルジュが、頭の中のモヤモヤを読み取って、必要なものを見極めてくれるようなものです。

今回の統合により、Instacartは、問い合わせから支払いまでの完全な買い物サイクルを、ユーザーが会話インターフェースから離れることなく提供する、ChatGPT上で初めてのパートナーとなりました。

たとえば、こんな使い方

ChatGPTは、会話の中で「レシピを提案する」「その材料をカートに入れる」「近くの店舗の在庫を確認する」などを、一連の流れとして実行できるようになっています。

具体的なシーンを想像してみましょう。

あなた: 来客があるから、簡単で見栄えのする前菜を作りたい。

ChatGPT: こんなカプレーゼサラダはいかがですか? 10分で作れて、材料はこちらです。Instacartで今すぐ注文できますよ。

あなた: いいね、それでお願い。

このように、ChatGPTがレシピの提案から買い物の手配まで一括して行い、Instacartが実際に商品を届けます。
チェックアウトプロセスは、Stripeによって提供されるクレジットカード決済フローを使用して、チャットインターフェース内で直接処理されます。
まさに「思いついたらすぐ実行」の世界が広がっているのです。

背景にあるのは、AIの進化と消費者の変化

なぜ今、このような仕組みが注目されているのでしょうか?

背景には、AIの飛躍的な進化と、消費者の購買スタイルの変化があります。
これまでのオンラインショッピングは「欲しい商品を探して、カートに入れて、購入する」という能動的な流れが必要でした。

しかし今、消費者はより「状況に応じた提案」や「手間のない決断」を求めています。
AIはまさにそこに応える存在です。

ChatGPTのVP兼責任者であるNick Turley氏は「ChatGPTに直接統合されたInstacartアプリにより、ユーザーは食事の計画からチェックアウトまでを、シームレスな会話の中で完結できるようになりました」と述べています。
この目標は、AI提案を実際のサービスに直接つなげることです。

テクノロジーは、人の感覚に近づく

これまでのECサイトは、言ってみれば「セルフサービスのスーパーマーケット」でした。
広い売り場を歩きながら、自分で探して選ぶスタイルです。

一方、エージェンティック・コマースは「優秀なパーソナルシェフ兼買い物代行」がそばにいる感覚に近いものです。
しかもそのシェフは、あなたの過去の好み、今の気分、アレルギー情報まで把握して、最適な提案をしてくれます。

InstacartのCTOであるAnirban Kundu氏は「AIエージェント内でのショッピングを実現するには、非常にローカルで常に変動する在庫を解釈できる技術が必要です」と指摘しています。
Instacartは、10万店舗にわたる18億以上の商品インスタンスをカバーする大規模なデータセットにAIの応答を基づかせることで「幻覚」のリスクを軽減しようとしています。

これは、テクノロジーが「人に寄り添う存在」へと進化している証とも言えます。

今後の広がりに期待

今回の機能は、デスクトップおよびモバイルウェブプラットフォームで既に利用可能であり、iOSおよびAndroidアプリケーション向けのネイティブモバイル対応も間もなく展開される予定です。

将来的には、衣類や日用品、旅行プランなど「選ぶのが面倒」だけど「失敗したくない」場面での活用が広がるでしょう。

また、Instacartは、OpenAI、Google、Microsoftなどの主要なAIプレーヤーの主要パートナーとして機能することを明言しており、買い物だけでなく、健康管理やライフスタイル提案にもAIが関与する未来が見えてきました。

「選ぶ」という負担を、AIがやさしく肩代わりしてくれる時代へ

私たちは日々、驚くほど多くの選択をしています。
「何を食べよう」「何を着よう」「どこで買おう」。
その一つひとつが、時に小さなストレスとなって積み重なります。

エージェンティック・コマースは、そんな日常の「選択疲れ」から私たちを少しずつ解放してくれます。

そして、AIが私たちの思いに寄り添ってくれるこの未来に、どこか温かさすら感じるのです。

買い物が、ただの行動ではなく、心地よい体験に変わるそのとき。
それは、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

参考:Instacart pilots agentic commerce by embedding in ChatGPT

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