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14万人にAIを導入したシティ銀行が、最初にやったのは「250人の実験」だった

AI

「AIを導入すれば、すべてが一気に変わる」
本当にそうでしょうか?

たとえば新しいテクノロジーを職場に導入するとき、多くの人が期待します。
「これさえあれば仕事がラクになる」「業績が上がる」「競争に勝てる」と。

でも、現実はもう少し複雑です。

変化は、必ずしもドラマチックな音を立ててやってくるわけではありません。
むしろ、それは静かで、根気強く、地味な努力の積み重ねとして進んでいきます。
今回ご紹介するのは、世界的な金融機関であるシティグループ(Citi)が、14万人の社員にAIツールを導入したという、驚きのプロジェクト。

でも、それ以上に驚くのは、そのプロジェクトが「静かに」「慎重に」進められたという事実です。

本記事では、その舞台裏を、初心者にもわかりやすく紐解いていきます。

一夜にして変わる世界なんて、存在しない

AIがニュースの見出しを飾るとき、そこには華やかな言葉が並びます。
「革新」「自動化」「革命」
けれど、シティのAI導入には、そんな派手な演出は一切ありませんでした。

2023年、シティは社内で生成AI(ChatGPTのような技術)を活用するための取り組みを静かにスタートさせました。
最初のステップは、小さな実験的な取り組みから。
つまり「まずはやってみよう」の精神です。

2023年10月の時点で、シティは約250人の開発者によるパイロットプログラムを開始しました。
たとえば、AIがコードの作成を支援したり、文書を整理したり。
最先端の技術も、最初の用途はとても身近なものでした。

この姿勢、どこか家庭菜園に似ていませんか?
いきなり果樹園を作るのではなく、まずはプランターでハーブを育ててみる。
その成長を見ながら、少しずつ手を広げていく。

そんな丁寧な進め方を、シティは選んだのです。

キーワードは「信頼」と「責任」

では、なぜこのプロジェクトは「静かに」進められたのでしょうか。

答えはとてもシンプルで、そして本質的です。
金融機関にとって最も大切なのは、顧客との信頼関係。AIが間違った判断をしてしまえば、それは即、信頼の損失につながります。

だからこそ、シティは透明性のあるガバナンスを重視しました。
AIの使用は厳格に管理され、社員たちはルールを学び、AIとの「付き合い方」を丁寧に身につけていきました。
社員から350を超える活用アイデアが提案されるなど、現場からのフィードバックを重視した展開が行われました。

これはまるで、新しい楽器を手にした音楽家のようです。
いきなりステージに立つのではなく、毎日少しずつ音を確かめながら練習を重ねる。
派手ではなくても、それが本当のプロの姿勢なのです。

14万人の「試行錯誤」こそ、未来への確かな一歩

2024年12月、シティは社内の約14万人にAIツールを展開しました。
導入されたのは「Citi Assist」と「Citi Stylus」という2つのツール。
Citi Assistは社内ポリシーや手続きを検索できる「超賢い同僚」のような存在で、Citi Stylusは複数の文書を同時に要約、比較、検索できる機能を持っています。

これらのツールは米国、カナダ、ハンガリー、インド、アイルランド、ポーランド、シンガポール、英国の8カ国で展開され、その後さらに多くの市場へと拡大されていきました。

社員たちは新しいツールに触れながら、こう自問しました。

このAIは、本当に業務に役立つのか?

判断に誤りはないか?

私たちが責任を持てる使い方とは何か?

この「問いかけ」が何よりも大切です。
なぜなら、テクノロジーの価値は、それを使う人間の姿勢によって決まるから。

ある意味で、AI導入とは人間力の再確認でもあるのです。

「静かな革新」が、未来をつくる

私たちは、変化を求めるとき、しばしば「スピード」や「目新しさ」に目を奪われがちです。
でも、シティの事例が教えてくれるのは「慎重さ」と「誠実さ」こそが、組織に本当の力をもたらすということ。

250人のパイロットから始まり、14万人の現場社員とともに地に足のついたAI導入を進めたこのプロジェクトは、まさに「静かな革新」でした。

一歩ずつ、確かに。
地味だけれど、確実に未来へとつながる足跡。

派手な演出よりも、真摯な取り組みこそが、テクノロジーと人間の橋渡しになるのかもしれません。

参考:The quiet work behind Citi’s 4,000-person internal AI rollout

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