小さなニュースが、ある日、ふと心に引っかかりました。
「サウジアラビア、AI都市”NEOM”建設へ」—。
はじめはピンと来ませんでした。
しかし調べていくうちに、私はある確信を持つようになったのです。
「次のシリコンバレーは、もしかしたら中東にあるのかもしれない」
石油の国が、AIの国へ
中東といえば、石油。
しかしその「常識」は、静かに、そして確実に変わり始めています。
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールといった国々は今、これまでの資源依存から脱却し、新しい時代への扉を開こうとしています。
その鍵となるのが、テクノロジーとAIへの巨額投資です。
実際に、トランプ大統領の中東訪問では2兆ドルを超える投資協定が発表され、サウジアラビアは政府系ファンド支援のもと「Humain」というAI企業を設立しました。
この企業はすでに Nvidia や AMD と提携し、18,000 基を超える Nvidia チップの国内配備を計画しています。
たとえばサウジアラビアの「Vision 2030」では、未来都市 NEOM を筆頭に、スマートインフラ、AI、再生可能エネルギーなどへの積極的な資金投入が進んでいます。
そこには単なる都市開発ではなく「未来を丸ごと設計する」という野心が込められているのです。
なぜ、世界のテクノロジー企業が中東を目指すのか?
世界の有名スタートアップが、次々と中東に進出しています。
いったい、彼らを惹きつけるものとは何なのでしょうか?
1. お金だけじゃない。国家ぐるみのテック育成熱
中東諸国には、政府系ファンドによる潤沢な資金があります。
しかし注目すべきは、その「使い方」です。
ただの投資ではなく「どうすれば世界トップレベルのAIエコシステムが生まれるか」を本気で考え、教育・制度・人材育成まで一体で支援しているのです。
実際に MENA 地域のスタートアップは 2025 年4月に2億 2,840 万ドルを調達し、3月の2倍以上となりました。
カイロの投資プラットフォーム「Thndr」は 1,570 万ドルを調達し、サウジアラビアと UAE への展開を進めています。
2. 「世界の十字路」にある戦略的ポジション
中東はアジア、ヨーロッパ、アフリカの真ん中に位置します。
つまり、24時間の地球規模で見たとき「全方位とつながれる」絶好の拠点なのです。
しかも人口の多くは30代以下。デジタルネイティブ世代に向けた実験がしやすい市場でもあります。
3. 脱炭素時代のサバイバル戦略
「石油の時代は永遠ではない」
その現実を直視し「次の成長エンジンをどう創るか」に本気で取り組む姿勢は、いまや欧米の比ではありません。
Oracle はサウジアラビアでのクラウドサービス拡張に 140 億ドルの投資を約束し、Google、AWS、Microsoft も地域データハブへの投資を進めています。
データが新たな「石油」になる時代へ
「データは21世紀の石油」と言われます。
ならば、中東が「次の石油」であるデータを制する場所になるのも、自然な流れかもしれません。
実際に、NEOM では都市インフラから医療、物流、気候まで全てがセンサーとAIで制御され、膨大なデータが生まれる仕組みが設計されています。
UAE もアブダビに世界最大級のAIキャンパスを建設し、Amazon や OpenAI との提携を通じて現地データ処理能力を拡張しています。
これこそが、AI開発者や企業にとっての「金鉱」なのです。
未来のAIアプリは、砂漠で生まれるかもしれない
たとえば、あなたが使っている翻訳アプリや健康管理ツール。
そのAIの一部は、アブダビのAI研究施設やサウジアラビアの Humain で開発されたものかもしれません。
つまり「遠い国の話」ではないのです。
中東のテクノロジーは、確実に私たちの日常へと近づいてきています。
おわりに:変化の風は、予想外の場所から吹く
どこか乾いた、遠い世界のように思える中東の砂漠。
しかし今、その場所に、人類の未来を形づくる風が吹いています。
もしあなたが「未来はどこから来るのだろう」と思うなら—ぜひ目を向けてみてください。
未来は、意外と砂の上に描かれているのかもしれません。
参考:Why the Middle East is a hot place for global tech investments
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