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2歳までの“発達の伸び方”でわかる?超早産児のASDリスクを見える化した最新研究が示すこと

AI

超早産児のASDリスクを、発達の軌跡と機械学習でそっと見える化する研究

「うちの子、ことばがゆっくりかも」
「目は合うけれど、呼んでも振り向かない日がある」

そんな小さな違和感は、育児の真ん中に静かに居座ります。
とくに、超早産(妊娠32週未満で生まれた)の子を育てる家庭では、通院や発達フォローが日常の一部になりやすく、心配と安心が交互にやってくるものです。

今回紹介するのは、台湾の南部で行われた大規模な追跡研究です。
超早産児を6か月、12か月、24か月で発達評価し、5歳でASD(自閉スペクトラム症)を専門的に診断。
そのデータから「2歳までの発達の変化のしかた」が、将来のASDリスクの層別化に役立つかを検討しています。
結論を先に言うと、希望の持てる示唆がありました。
それは「当てる占い」ではなく、必要以上に不安を増やさないための道具としてです。

この研究は何をしたのか

「発達の点」ではなく「発達の線」を見た

赤ちゃんの発達は、写真のような一枚の瞬間では測れません。
むしろ、成長は連続した動画で、意味があるのは「どんなペースで伸びていくか」という流れです。

この研究では、超早産で生まれた子どもたちを対象に、発達検査として広く用いられるBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査 第3版)を、修正月齢6・12・24か月で実施しました。
BSID-IIIは大きく次の領域をみます(数値は年齢に合わせて標準化された点数です)。

認知は考える力、問題解決の芽を評価します。
言語理解(受容)はことばを「わかる」力、言語表出(表出)はことばを「出す」力を測ります。
微細運動は指先の器用さで、まねっこを含む課題も多く含まれます。
粗大運動は、寝返り、座る、歩くなど体の大きな動きを評価します。

そして5歳時点で、ADOSやADI-Rといった専門的な枠組みでASDを評価し、最終診断をチームで決めています。
対象は最終的に583人で、うち75人(12.9パーセント)が5歳でASDと診断されました。

いちばん大事な発見

分かれ道は「2年目」に現れやすい

研究の面白さは、図で一目瞭然です。
6〜24か月の発達の軌跡(LOESS曲線)を比較すると、ASD群と非ASD群で「分かれ方」に特徴がありました。

まず、認知は早い時期から、ずっと低めでした。
ASD群は、6か月の時点から認知スコアが一貫して低めでした。
12か月でも差が続き、24か月では差がより明確になります。
たとえるなら、同じ山を登っていても、ASD群は最初から「少し重いリュック」を背負っている感じです。
速度は出にくいけれど、歩みは続きます。

一方で、ことば(理解・表出)と微細運動は「2年目に差が開く」パターンを示しました。
6〜12か月では受容・表出コミュニケーションや微細運動は大きな差が出にくい。
ところが、12〜24か月で伸び方が鈍くなり、差がはっきりしてきます。

この「2年目の分岐」は、とても現実的です。
1歳前後は、個人差が大きい時期。周りと比べても判断しづらい。
けれど2歳に近づくと、理解ややりとり、模倣、指先を使う遊びなどが積み重なって、坂道の勾配が見えやすくなります。

意外かもしれませんが、粗大運動の軌跡は両群で有意差が出ませんでした。
ここが大事なポイントです。
「歩くのが早いから安心」「運動が得意だから大丈夫」といった単純な話ではなく、超早産児のASDリスクでは特に、指先の課題ややりとりを含む微細運動、ことばの理解の伸びがヒントになりやすい可能性が示されています。
研究者は、微細運動課題には「まねっこ」が含まれ、検者との相互作用が必要なことが影響しているかもしれないと述べています。

機械学習は「診断」ではなく「振り分け」に向く

24か月までのデータを足すと予測が良くなる

次に研究チームは、出生時の情報(在胎週数、性別、SGAなど)に、6・12・24か月の発達スコアを段階的に追加して、ASDを予測するモデルを作りました。
使ったアルゴリズムは複数で、最終的にSVM(サポートベクターマシン)が最も良い成績でした。

出生時情報だけだと、ROC-AUCは0.57程度で、精度も高くありません。
しかし、24か月までの発達スコアを加えると、性能が大きく改善しました。
ベストのSVMで、正解率は71.8パーセント、ROC-AUCは0.69、感度は64.2パーセント、特異度は72.9パーセントとなりました。
陽性的中率は24.7パーセント(当たりと言い切る力は弱い)でしたが、陰性的中率は93.6パーセント(低リスクを見極める力が強い)でした。

この数字、どう受け取ればいいでしょう。
たとえ話をします。
このモデルは「宝探しの金属探知機」に似ています。
金貨をピンポイントで当てるのは得意ではない(陽性的中率が低い)。
でも「ここには金属がほぼ無い」と言うのはかなり上手い(陰性的中率が高い)。
だから用途は、診断の代わりではなく、フォローの優先順位をつける仕分けに向きます。
研究でも、不要な紹介や過度な不安を減らし、資源配分を最適化する可能性が述べられています。

なぜ「24か月」が効くのか

発達は積み木で、2歳前後に形が見える

研究では、6か月や12か月までの情報を足しても改善は小さく、24か月の情報が入ったときに予測性能が大きく上がることが示されています。

これは直感にも合います。
ことばの理解、やりとり、模倣、指さし、遊びの広がり。
こうした「社会性と言語の積み木」が、2歳前後で目に見える構造になり始めるからです。
1歳の積み木はまだ土台づくりで、欠けても気づきにくい。
2歳になると塔ができて、バランスの違いが見える。そんなイメージです。

親として、現場として、どう活かせるか

「点数」より「伸び方」に目を向ける

この研究のメッセージを、日常の言葉に翻訳するとこうなります。

受診のたびに「今の点数」だけで一喜一憂しすぎないことが大切です。
代わりに、6→12→24か月で、伸び方がどう変わっているかを一緒に見てもらいましょう。
とくに認知が早期から低めで推移しているか、そして12〜24か月で、理解・表出コミュニケーションや微細運動の伸びが鈍ってきていないかを丁寧に共有することが重要です。

そして重要なのは、もし気になる兆しがあったとしても、結論を急がないこと。
研究者自身も、モデルの性能は「有望だが控えめ」で、単一地域コホートであるなど限界を明確に述べています。

だからこそ使い方は、白黒をつけるためではなく、次の一手を選ぶため。
フォロー頻度、早期介入へのつなぎ方、家庭での関わり方の工夫。
そうした「未来の選択肢」を増やすための材料として、発達の軌跡を活かすのが現実的です。

まとめ

「不安を減らす予測」が、育児を前に進める

超早産児のASDリスクを早期に見つけるのは簡単ではありません。
ほかの発達課題と重なり、既存のスクリーニングがうまく働かないこともある。
だからこそ、この研究は「答えを断言する」のではなく、発達の軌跡という静かな証拠を積み上げました。

認知は早い時期から低めに推移しやすく、ことば(理解・表出)と微細運動は、12〜24か月で差が開きやすいことがわかりました。
24か月までの情報を統合すると、機械学習モデルはとくに「低リスク」を見分けやすくなります。

育児は、地図のない旅に似ています。
でも「来た道の足あと」を丁寧に振り返ると、次に踏み出す一歩が少しだけ確かになります。

今日のあなたの不安が、明日のあなたの観察力に変わりますように。
そしてその観察力が、子どもの可能性を守るやさしい灯りになりますように。

参考:Early developmental trajectory phenotypes for risk stratification of autism spectrum disorder in very preterm infants: a machine learning approach

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