「画像を”言葉のように”読む?」—これが今のAIの最前線
たとえばあなたが、猫の写真を見て「これは猫だ」と瞬時に判断できるように、AIも画像を理解しようと奮闘しています。
その中で、近年大注目されているのがVision Transformer(ViT)という技術。
実はこれ、もともと文章を読むために開発された仕組みを応用して、画像を「読む」ように処理してしまうのです。
ですが「Transformer」や「自己注意機構」なんて言われても、何だか難しそうですよね。
大丈夫です。
この記事では、Meta AI とソルボンヌ大学の研究チームによる最新の研究を、3つのカンタンでおもしろい発見に絞って、初心者でもスッと理解できるようにご紹介します!
発見①:もっと速く、もっとカンタンに! Transformer を”並列処理”してみたら?
通常の Vision Transformer は、画像を小さなパッチ(切れ端)に分けて、順番に1枚ずつ処理していきます。
まるで1ページずつ本をめくるようなもの。
しかし、研究者たちはこう考えました。
「これ、一気に読めたらもっと速くていいんじゃない?」
そこで彼らは”章ごとに本を読む”ように、複数の処理を並列で進められるように工夫しました。
結果は驚き。
処理速度はそのままに、精度もほとんど落ちないか、むしろ良くなることも!
まるで高速読書術を習得したAIのようですね。
発見②:「全部を学び直さなくていい」—必要なのは”注意する力”だけ
AIが別のタスクを学び直すとき、ふつうは全部の「脳みそ(パラメータ)」を更新しなおす必要があります。
でも ViT では注意力(Attention)の部分だけをチューニングすれば、十分に対応できることがわかりました。
これはつまり、こういうこと。
「人間だって、新しいことを学ぶとき、全部をゼロから覚え直さない。注目するところを変えるだけで対応できる」
このアプローチは、AIの学習コストを大幅に削減し、低リソース環境でも活躍できる道を開きます。
発見③:画像を加工しても”記憶の切れ端”として役立てられる!
最後に紹介するのは、少し未来感のある技術「自己教師あり学習(self-supervised learning)」について。
これは、答えを教えなくてもAI自身がルールを学ぶ方法。
その中でも「マスク学習(Masked Learning)」という仕組みが人気ですが、問題がひとつ。
「画像の一部をマスクしても、前処理の段階で情報が漏れてしまう」
これに対し、研究者たちは”パッチ同士を完全に独立して処理する”という新しい手法「hMLP ステム」を提案。
するとどうでしょう。
学習の効果はそのままに、余計な干渉をシャットアウトできるようになりました。
まるでパズルのピースを1つずつ別々の箱に入れて管理するようなイメージです。
「より少なく、より賢く」——これがAI進化の新しいカタチ
この研究が教えてくれるのは、単に性能を上げるだけではない、効率よく、スマートに学ぶAIへの道です。
- 無理に深くするより、横に広げて並列化
- 全部を覚え直さず、注目すべきところに集中
- 入力の工夫で、学習の可能性をさらに引き出す
これらの発見は、AI技術の進化が”力技”から”知恵”に移ってきたことを感じさせます。
未来のAIは、もっと小さく、もっと速く、そしてもっと賢くなるかもしれません。
参考:Three things everyone should know about Vision Transformers
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