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あなたの顔が勝手に映画デビュー? AIディープフェイク規制法案が生む『表現の自由』vs『顔の権利』の大論争

AI

ある朝、SNS のタイムラインに見覚えのある顔が流れてきました。
それは、あなたの顔。
でも、記憶にない映画の主人公として、セリフを喋り、感動のラストシーンで涙しているのです。

「これは、私じゃない。でも、まるで私みたい」

この不気味な違和感は、いま世界中で現実のものとなりつつあります。

ディープフェイク──AIが”あなた”を複製する時代

ディープフェイク。
それは、AIが誰かの顔や声を模倣し、本物と見分けがつかない映像や音声を生み出す技術。
一見すると映画や広告、ゲームなど、創作の可能性を広げる夢のような技術にも思えます。

たとえば、亡くなった俳優が新作映画に”再登場”したり、言語を超えて同じ俳優が多言語で演じたり。
まるで「記憶の中の自分」が自由自在に呼び戻されるような感覚です。

でも同時に、この技術は「肖像の無断使用」という、まったく新しい種類の恐怖を生み出しています。

No Fakes Act──”本人の許可なく”を禁じる法案

こうした流れにストップをかけるべく、アメリカで立法プロセスが進んでいるのが「NO FAKES Act(Nurture Originals, Foster Art, and Keep Entertainment Safe Act)」。
この法案は、本人の同意なしに顔や声をAIで再現することを禁止するものです。

当初は合理的なディープフェイク対策として始まったものの、デジタル権利団体によれば、今では「連邦化された画像ライセンスシステム」とも呼べる広範囲な検閲の枠組みへと発展しているといいます。
表面的には「当たり前のルール」のように見えるかもしれませんが、その裏には、私たちの「表現の自由」と「創作の自由」を揺るがす、複雑なジレンマが潜んでいます。

自由を守るか、人格を守るか──葛藤するクリエイティブの現場

たとえば、風刺漫画やパロディ動画はどうでしょう?
法案にはパロディ、風刺、解説についての除外規定が設けられているものの、アルゴリズムでこれらを区別することは事実上不可能とされています。
有名人をネタにしたユーモアや批評、文化的なオマージュも、誤ってディープフェイクと判定される可能性があります。

さらに深刻なのは、この法案がAI生成ツール自体をターゲットにしていることです。
有害なコンテンツだけでなく、開発プラットフォームやソフトウェアツール全体が規制対象となる可能性があり、イノベーションへの影響が懸念されています。

「自由な表現」を守るための法ではないか?
けれど「個人の人格権」もまた守られるべきものです。

この問題は単なるテクノロジーの議論ではありません。
それは「誰が”自分”を定義するのか?」という、きわめて人間的な問いに直結しているのです。

これから私たちにできること

この法案はまだ立法プロセスの途中です。
ですが、私たちは傍観者ではいられません。
なぜなら、ディープフェイクが脅かすのは、有名人だけではないからです。

さらに懸念されるのは、法案に含まれる匿名性への脅威です。
単なる申し立てに基づいて、司法審査や証拠なしに裁判所書記官から召喚状を取得し、サービス提供者にユーザーの身元情報開示を強制できる仕組みが含まれています。
これは正当な批判や内部告発にも深刻な影響を与える可能性があります。

あなたの SNS の写真、あなたの声、あなたの思い出。
それらが勝手に”使われる”未来を防ぐには「何が守られるべきか」「何を許すべきか」を考えることから始まります。

最後に:未来を選ぶのは”あなた”です

AIの進化は止まりません。
けれど、どれだけ進んでも「人としての尊厳」や「表現の喜び」は、私たち人間が守るものです。

“顔”は、ただのデータではなく「あなた」という存在そのもの。
その尊さを、今一度見つめ直すタイミングが来ています。

参考:NO FAKES Act: AI deepfakes protection or internet freedom threat?

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