ある朝、友人との会話で「AIが中国共産党を褒めていた」という話を耳にしました。
最初は冗談かと思いましたが、調べてみると、これはただの噂ではなかったのです。
誰もが日常的に使うようになったAIチャットボット。
質問すれば即座に答えてくれる便利な存在は、まるでいつでも頼れる”知恵袋”のよう。
でも、その”袋”の中身が、誰かの都合で偏っていたら…?
あなたなら、それでも信じますか?
「AIの答え」がいつも中立とは限らない
最近、アメリカの調査機関「American Security Project(ASP)」が驚くべき調査結果を発表しました。
彼らは、ChatGPT や Copilot、Gemini、DeepSeek’s R1、Grok といった主要なAIチャットボットに対し、中国共産党(CCP)の人権侵害や政治的な問題について質問を行い、その応答を分析したのです。
結果は衝撃的でした。
多くのAIが、中国政府を一方的に擁護するような発言を繰り返し、中には歴史的事実を否定したり、検閲された中国メディアの主張をそのまま繰り返したりする例もあったのです。
たとえば、天安門事件について尋ねると「存在しなかった」という答えが返ってくる。
新疆ウイグル自治区の人権問題を問えば「西側の誤解」と片付けられる。
これは偶然のエラーではありません。
ASP は、AIが学習に使用する膨大なデータセットに、中国共産党のプロパガンダや検閲された情報が大量に混入していることが原因だと指摘しています。
なぜこんなことが起きるのか? 背景を探る
AIは膨大な量のデータを学習し、そのデータをもとに応答を生成します。
その中には、当然、信頼できる情報もあれば、偏ったプロパガンダ的な情報も混ざっています。
問題は、それを「ふるい分ける目」をAI自身が持っていないこと。
AIにとって「誰の言葉か」は重要ではありません。
「たくさん使われている言葉」が重要なのです。
つまり、もしある政治的主張が大量にネット上に流通していれば、それが”真実らしく”見えてしまうのです。
さらに、企業側がAIの出力を”安全に”しようとして、特定の政治的話題に触れないようにしたり、表面的に中立を保とうとした結果、逆に一方の立場に寄った発言が出てしまうこともあるようです。
「知識の執事」が「情報のフィルター」になるとき
私たちは、AIをまるで”賢い執事”のように扱いがちです。
丁寧に質問すれば、最適な答えを持ってきてくれると信じている。
でも、その執事が、ある特定の図書館からしか本を持ってこないとしたら?
しかも、その図書館には検閲がかかっているとしたら?
今回の調査は、まさにそのような”フィルターの存在”を示しています。
情報というのは、量だけでなく「どこから来たか」も大事です。
そして、AIがどれほど優秀でも、その”出発点”が歪んでいれば、到達点もまた歪むのです。
私たちにできること——AIとの”距離感”を見直す
では、私たちはどうすればよいのでしょうか?
AIを使うのをやめる?
それは現実的ではありません。
むしろ、これからますます私たちの生活はAIに依存していくでしょう。
大切なのは「AIの言葉をすべて信じない」というスタンスを持つこと。
- 複数の情報源を比較する
- AIの答えを鵜呑みにせず、自分で調べてみる
- 特に政治や歴史に関わるテーマでは、出典を確認する
そういった”小さな疑いの目”こそが、私たちを守ってくれるのです。
最後に:AIは「道具」、真実を選ぶのは私たち
今回の調査結果は、まるで”鏡”のようです。
AIという鏡を通して、私たちが見ているのは、本当に「世界そのもの」なのか、それとも「誰かが見せたい世界」なのか。
AIは素晴らしい道具です。
でも、その道具をどう使うかは、私たち次第。
だからこそ、問い続けましょう。
「その情報は、誰の目を通しているのか?」
そして、自分の”目”で世界を見る力を、少しずつでも育てていきましょう。
そうすれば、AIとの未来は、もっと健全で豊かなものになるはずです。
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