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「AIにはビッグデータが必要」という常識が崩壊⁉ ランダムな文字列だけで最強AIを作る方法が判明

AI

最新研究(2025年)が示す、AIの新たな可能性

もしかして、データがいらなくなる未来が来る?

私たちは今、AIに大量の「現実のデータ」を食べさせることで、その賢さを育ててきました。
ネット上の文章、画像、動画…ありとあらゆるものを学習素材として、AIは日々成長しています。

でも最近、ある疑問が浮かび始めました。

「この先も、そんなに大量のデータを集め続けられるのだろうか?」

特に、クリエイターたちの間では「自分たちの作品が無断でAIに使われているのでは?」という不安も広がっています。
そんな中、ある研究が注目を集めています。

それは“意味のないランダムなデータ”を使って、AIを強く育てるという発想です。

アムステルダム自由大学の Peter Bloem 氏による 2025 年の最新研究「Universal pre-training by iterated random computation」は、この驚くべき可能性を示しています。

キーボードを叩くサルが教えてくれること

みなさんは「無限のサル定理」というお話をご存じですか?

タイプライターの前にサルを置き、好き勝手にキーを叩かせれば、ものすごく長い時間の後には、シェイクスピアの全作品を”偶然”書き上げることがある、というものです。

もちろん、そんな偶然はほぼ起きません。
でも、もう少しだけ仕組みを工夫してみましょう。

ランダムな文字列を、コンピュータに通して加工する。
するとどうでしょう—完全な無意味だったデータに、わずかな「構造」が生まれるのです。

この「構造こそが学習に価値をもたらす」という考え方が、今回紹介する「ユニバーサル事前学習(Universal Pre-training)」の核となるアイデアです。

この手法は、理論的には Solomonoff 誘導という最適な汎用学習アルゴリズムを近似することが示されており、アルゴリズム複雑性理論に基づいた確固たる基盤を持っています。

何もないところから始める、AIのための「普遍的な準備運動」

この研究では、まず完全にランダムなデータ(文字の羅列など)を生成します。
そして、それをランダムに初期化されたニューラルネットワークに通して「変換」します。
こうしてできた“ちょっとだけ構造を持ったデータ”を使ってAIを事前学習させるのです。

驚くべきことに、こうして事前学習されたモデルは、自然言語やプログラムコードといった「本物のデータ」に対しても、ゼロショットである程度の予測精度を発揮するようになりました。

そして、モデルのサイズを大きくするほど、その効果も向上していくのです。

つまり「現実のデータを一切見ていないのに、現実の課題に対応できる」という、ちょっと信じられないようなことが起きているのです。

構造とは「意味」ではなく「パターン」

この仕組みが成立するカギは「意味」ではなく「パターン」を学習することにあります。

たとえば、どんな文章でも「最初に来る文字は、途中にもよく出てくる」といった基本的な傾向は、人工的に作ったデータにも現れます。
こうした“データに共通する構造”をAIに学ばせておくことで、本物のデータに出会ったときの理解が早くなるのです。

研究ではこれを「計算によって構造を加える」と表現しています。
完全なランダムから始めて、少しずつ”学習しがいのある”データへと変えていく。
それはまるで、無垢な石に彫刻を施していくようなプロセスです。

実験結果が示す、驚きの性能と汎用性

この研究では、事前学習に使われた”構造付きランダムデータ”によって、以下の重要な成果が得られました:

  • 自然言語やプログラムコードに対して、ゼロショットで予測性能が向上
  • モデルサイズが大きくなるほど性能が改善(スケーリング効果を確認)
  • その後のファインチューニングで、従来手法より高速な収束と優れた汎化性能を実現
  • 6つの異なるデータセットで、ランダムベースラインを大幅に上回る性能

特に注目すべきは、一部のタスクでマルコフモデルの性能を上回ったことです。
しかも、データを追加しなくても、コンピュータリソースを使って“構造を深める”ことでより良い学習ができるということも確認されています。
これはつまり、データが足りなくても、計算力でそれを補える可能性があるということです。

これは、AI開発の新たな「フェアな入り口」になるかもしれない

「たくさんのデータがなければAIは作れない」と言われてきた時代に、この研究は新しい選択肢を提示しています。

データを持たない個人や小さな組織が、構造的なランダムデータを活用することで、強力なAIを育てる時代が来るかもしれません。

もちろん、まだ課題はあります。
現在の実装は真の意味での「普遍性」には到達しておらず、いくつかの単純なタスク(bit 操作など)では期待される性能を示せていません。
また、本当に幅広い分野に通用するかどうかは今後の検証次第です。

しかし、この研究が示した可能性は計り知れません。

  • エネルギー消費の観点から、データ収集に伴うコストを計算資源に転換できる
  • プライバシーを保護しながら強力なAIモデルを構築できる
  • 一度の大規模事前学習を多くのタスクで共有することで、全体的な効率性を向上できる

コンピュータと偶然と構造の力を借りて、AIの未来はもっと開かれたものになるかもしれません。

参考:Universal pre-training by iterated random computation

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