「あの頃、家電がすべて”日本製”だったのを覚えていますか?」
1980〜90 年代、日本の家電は世界を席巻していました。
ソニーのウォークマン、パナソニックのテレビ、シャープの冷蔵庫。
まさに「メイド・イン・ジャパン」が品質の代名詞でした。
でも今、世界の主役はすっかり変わりました。
スマートフォンといえばアメリカの Apple、中国の Huawei。
EV車はテスラと BYD。
そして、人工知能(AI)の主戦場でも、アメリカと中国が熾烈な競争を繰り広げています。
最近、上海で始まったある取り組みは、この競争に一石を投じました。
上海が仕掛ける1億 3900 万ドルのAI投資戦略
上海市は、AI産業向けに10億元(約1億 3900 万ドル)という野心的な補助金プログラムを発表しました。
これは単なるお祭りではありません。
中国政府が主導し、AIの技術的自立を目指す大規模な戦略的投資です。
この包括的なパッケージは3つの主要分野に配分されます:
- コンピューティングパワー補助金に6億元
- サードパーティAIモデル割引に3億元
- トレーニングデータセット調達支援に1億元
さらに、新しいAI研究機関には最大5億元の支援が用意され、3~5 年間の資金保証も提供されています。
背景にあるのは「アメリカとの技術冷戦」
ご存知のとおり、現在、アメリカと中国の間では”AI冷戦”とも言えるテクノロジーの綱引きが続いています。
7月23日に発表されたトランプ政権の包括的AI行動計画は、重要技術への厳格な制限を維持しながら、米国AI企業への規制緩和とインフラ支援を加速させています。
トランプ大統領は「アメリカが人工知能の分野で世界をリードするために何でもする」と述べ、「AI輸出大国」となる意図を強調しました。
一方の中国は「外に頼らず、自国でAIを育てる」という方向に大きく舵を切りました。
中国全土で激化する都市間AI競争
上海の取り組みは、中国全体でのより広範な動きを反映しています。各都市がAIの優位性確立に向けて激しく競争しているのです。
杭州は昨年、2億 5000 万元のコンピューティングパワー補助金配布計画を発表し、AIプレイヤーの DeepSeek を含む「6つの小さな龍」と呼ばれる有名な中国スタートアップ群を育成しています。
この都市間競争は上海と杭州にとどまらず、深圳、成都、北京も同様の支援策を導入しており、人工知能が中国政府の複数レベルで戦略的優先事項となっていることを示しています。
中国の自立戦略が示す成果
米国の制限にもかかわらず、アナリストらは中国の国内AI産業の大幅な成長を予測しています。
バーンスタインのアナリストらは、国内チップが 2027 年までに中国のAIアクセラレーター市場の 55% を占めると予測しており、これは 2023 年のわずか 17% から劇的な増加です。
「輸出規制は国内AIチップベンダーにとってユニークな機会を創出しました。彼らは最も先進的なグローバルな代替品と競争する必要がないからです」とバーンスタインの研究ノートは述べています。
HuaweiのAscend 910C は現在、Nvidia の H100 の約 65% の性能に達していますが、Nvidia の CUDA ソフトウェアプラットフォームとの直接的な互換性がないため、コンピューティングパワーは制限されています。
日本はどうする?取り残されないために
この記事を読んでくださっているあなたがもし、AI技術に関心があるなら――あるいは、ビジネスでの活用を検討しているなら。
この中国の動きは、他人事ではありません。
私たち日本も、今こそ問い直す必要があるのではないでしょうか。
「私たちは”使う側”で満足していないか?」
「自分たちで”創る力”を忘れていないか?」
AIは未来を形づくる重要な道具であり、武器でもあります。
その開発と活用を、ただ”海外製品”に頼っていては、やがて取り残される時が来るかもしれません。
最後に:未来は「創る者」の手に
上海で始まったAI投資戦略は、中国国内の技術的自立を刺激し、世界への挑戦状を叩きつける一歩でした。
世界AI大会で李強首相が述べたように、AIが一部の選ばれた者だけがアクセスできる「排他的なゲーム」にならないよう、国際協力が求められています。
しかし同時に、技術的優位性を巡る競争は激化しています。
競争が激化する今、問われているのは、どの国が最も効果的にAI技術革新を推進できるかという力です。
日本もまた、その舞台に立つ覚悟が求められています。
「見る側」から「創る側」へ。
それが、未来をつくる本当の一歩なのかもしれません。
参考:China doubles chooses AI self-reliance amid intense US competition
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