AMAZON でお買物

病気の未来予測がついにここまで。死のリスクまで“ほぼ的中”するAI『Delphi-2M』がすごすぎる

AI

ある日突然の診断…その影にあった「予兆」

もし、ある日突然「がん」と診断されたとしたら、あなたは過去の自分に何を伝えたいでしょうか?

「もっと健康診断を受けておけばよかった」
「あのときの不調、見逃すべきじゃなかった」
そんな後悔が心をよぎるかもしれません。

でももし、自分の病気の”未来予測”が事前に分かっていたら?
そんなSFのような話が、今や現実に近づいています。

その鍵を握るのが、今回Nature誌に掲載されたAIモデル「Delphi-2M(デルフィー・ツーエム)」です。

AIが描く、1,000以上の病気の”未来予測地図”

「Delphi-2M」は、私たち人間の健康履歴を読み取り、そこから将来起こりうる病気を予測してくれるAIモデルです。
まるで未来の天気予報のように”病気の可能性”を個人単位で予報してくれるのです。

どうやって予測しているの?

例えるなら、「人生という本を読んで、次にどんな章が来るかを当てる読書名人」だと思ってください。

このAIは、GPTという文章生成AIの技術をベースに、約240万人分の医療記録(イギリスのUKバイオバンクから約40万人、デンマークの医療データから約193万人)を学習しています。
そこから、過去の病歴や生活習慣(喫煙・飲酒・BMIなど)をもとに、次に起こりうる病気を時系列で予測するのです。

しかもこのAI、単なる確率予測にとどまらず、未来の病歴の”物語”を生成することができます。
たとえば「次は糖尿病、その後5年以内に心疾患の可能性、その間に関節痛も…」といった具合です。

本当に当たるの? 「驚異の精度」を検証

研究チームは、モデルの精度を複数の方法で検証しました。

1,000以上の病気の発症確率を高精度で予測し、AUC平均値は0.76に達しています。
“死”の予測精度は驚異のAUC 0.97を記録しました。
長期的な未来(最大20年)もシミュレーション可能で、他のAIモデルや医療スコア(Framingham、QRisk3など)と同等またはそれ以上の予測性能を示しています。

これは「未来の自分の健康」をかなりの精度で予測できる可能性を示しています。

どんな未来が見える? 生成された”人生の健康シナリオ”

Delphi-2Mのもうひとつの強みは「健康のシナリオ」を作り出す能力です。

たとえば、60歳時点の健康状態から80歳までの病気の流れを100通り生成し、その中から共通パターンを抽出できます。
喫煙者・非喫煙者、BMIの高低などによる将来の病気の違いも予測可能で「生活習慣が未来にどう影響するか」も可視化できるのです。

さらに驚くべきは「完全な架空データから学んだモデル」でも、実データとほぼ同等の精度(AUC 0.74)を達成した点です。
これは、プライバシーの壁を越えたAI医療研究の可能性を開く、大きな一歩といえます。

なぜ”説明できるAI”が重要なのか?

AIがどれだけ正確でも「なぜその予測をしたのか」が分からなければ、医師や患者にとって使いづらいものになります。

Delphi-2Mはそこもカバーしています。
SHAP(シャープ)と呼ばれる方法で「この病気が将来のリスクをどれだけ高めるか」を可視化できるのです。

例えば、膵臓の病気や肝臓疾患の履歴があると、膵臓がんのリスクが19倍に高まるケースが示されています。
そして、その膵臓がんの診断後には、死亡リスクが約1万倍近くに跳ね上がることも明らかになっています。

これは単なる予測ではなく「納得できる未来予測」への第一歩です。

私たちに何ができるのか? 未来の医療への希望と課題

Delphi-2MのようなAIは、将来的に次のような活用が期待されています。
高リスク患者の早期発見、スクリーニングの対象拡大(年齢だけでなくリスクで判断)、医療資源の効率的な配分、そして地域ごとの疾病予測による政策立案などです。

ただし、現段階では注意も必要です。
訓練データには偏りがあり(例として高齢者や低所得層のデータが不足)、予測にもそのバイアスが反映される可能性があります。

つまり、AIはあくまで「判断の補助ツール」であり、医師の知見や人間のケアを置き換えるものではありません。

おわりに 未来の自分に、何を残せるだろう?

Delphi-2Mが描くのは、私たちの体の中に秘められた”物語”です。
それは、過去の選択が未来の健康にどう影響するかを、静かに、しかし雄弁に語ってくれます。

このAIが教えてくれるのは、未来を予測することの「恐さ」ではなく、未来を変えられるという「希望」かもしれません。

今を知り、変えられるうちに動き出す。
そのために、Delphi-2Mのようなツールが、そっと背中を押してくれる存在になるのではないでしょうか。

参考:Learning the natural history of human disease with generative transformers

コメント

タイトルとURLをコピーしました