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「AIがいないと、何もできない?」──プログラミング初心者20人が体験した“学びの落とし穴”とは?

AI

プログラミング初心者が語る、AIとの学びのリアル

「わからないとき、誰に聞きますか?」

誰しも、授業中にふとつまづく瞬間があります。
となりの友だちにこっそり聞いたり、先生のヒントを待ったり。そんな光景は、教室でよく見られるものです。

でも今、その「となりの友だち」がAIになりつつあるとしたら、どう思いますか?

2025年、コロンビアのある大学で実施されたひとつの実験は、まさにAIが教室にやってきた瞬間をとらえたものでした。
そこには、戸惑いながらもAIを受け入れ、頼り、そして距離を測ろうとする学生たちの、等身大の姿がありました。


AIありとAIなし、二つの”試験”が語ること

この研究では、オブジェクト指向プログラミングの入門クラスを受講する20名の大学生に、こんな課題が出されました。

第1週:AIと一緒に挑む

Javaで映画館の上映リスト管理アプリを作るというタスク。
ChatGPTやPerplexity、Grok、DeepSeekなど、好きなAIツールの使用が許されました。
90分間の個別作業セッションです。

学生たちは、質問し、提案を受け、バグを直してもらいながら、まるでAIとペアプログラミングしているように課題を進めました。

第2週:AIなしで挑む

1週間後、今度は前回作成したアプリケーションを拡張するタスクが与えられました。
今度はAIの使用は禁止。
頼れるのは自分の頭脳と、前回書いた自分のコードだけです。
30分間のセッションでした。


学生たちの声が教えてくれたこと

アンケートには、率直な本音があふれていました。

AIのいる教室は「安心できる場所」?

「AIがいると、エラーの原因がすぐわかる」
「説明してもらえるから、安心して進められる」
「作ったコードが合っているかすぐに確認できた」

多くの学生が、AIを”自信をくれる存在”として捉えていました。
特に、不安の多い初学者にとって、AIの即時フィードバックは心強い味方だったようです。

データを見ると、学生たちは「作業スピードの向上」を最も高く評価していました(平均3.65点、5点満点中)。
AI使用量とスピード向上の間には統計的にも有意な相関関係が見られました。

たとえるなら、わからない問題を解くとき、そばで「こう考えてみたら?」とヒントをくれる家庭教師がずっと隣にいてくれるような感覚でしょう。

でも、AIがいなくなった瞬間に……

ところが、第2週に入って空気が変わります。

「どこを直せばいいのか分からなくなった」
「文法が曖昧だったと気づいた」
「AIなしだと、一気に不安になった」

コードは書けたけど、意味を完全には理解していなかった。
AIに聞けば済むから、深く考えていなかった。

そんな”後からくる気づき”に、学生たちは正直に向き合っていました。
興味深いことに、学生の自己評価と実際の行動の間にはギャップがありました。
多くの学生が「適度にAIを使った」と答えましたが、指導教員の観察では、実際にはかなり積極的にAIに依存していたことが分かりました。


AIは”杖”か”翼”か

この実験が教えてくれたのは、AIは「魔法の答え」ではないということ。

確かにAIは、速く、正確に、教えてくれます。
でも、その便利さが時に「考える力」を奪うこともあるのです。

ある学生はこう語っていました。
「AIは便利だけど、それだけだと”考える訓練”が足りなくなる」

まさに、杖として使えば支えになるけれど、過信すれば飛べなくなる翼のような存在。
それが、AIの二面性なのです。

調査では、AIなしでタスクを完了できた学生ほど、第2週の課題を「簡単だった」と感じていました。
つまり、真の理解度が、課題の難しさの感じ方を左右していたのです。


それでも、AIは学びを変えるチャンスかもしれない

多くの学生が、AIを「完全に排除すべき」とは思っていませんでした。

むしろ「使い方を学べば、いい先生になる」「デバッグやコードの見直しには役立つ」「授業での補助ツールとしてなら賛成」という前向きな意見が目立ちました。

実際、学生の4分の3が「AIはプログラミング学習に役立つ」と強く同意しています。
同時に、大多数の学生が「AIの出力を適応させるには、自分自身のコーディングスキルが必要だ」と認識していました。

AIを正しく使えば、自分で考え、自分で書く力を補強するパートナーになりうる。
その鍵は、私たちの「使い方」にあるのです。


あなたなら、AIとどう学びますか?

AIは、ただの道具ではありません。
「どこまで頼るか」「いつ手を放すか」を自分で選び取らなければならない、新しい”学びの相棒”です。

授業で、仕事で、趣味のプログラミングで。
あなたがコードを書くとき、AIは隣にいますか?
それとも、鏡のようにあなた自身を映す存在ですか?


最後に伝えたいこと

AIは私たちの”理解したつもり”をあぶり出してくれます。

だからこそ、学びのなかでAIを「先生」ではなく「対話相手」として使っていく。
それが、これからの時代の「学ぶ力」なのかもしれません。

この研究は小規模で特定の文脈に限られていますが、AI支援学習の長期的な影響を理解するための重要な第一歩となっています。
今後は、行動データや縦断的研究、パフォーマンス指標を取り入れた研究が期待されます。

参考:New Kid in the Classroom: Exploring Student Perceptions of AI Coding Assistants

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