ある日、何気なくスクロールしていたSNSで、思わず目を疑うような広告を見かけました。
男性向けのスポーツウェアブランドの広告なのに、なぜか高齢の女性がアームチェアに座っている……。
実はこれ、Meta(旧Facebook)のAIが自動生成した広告なんです。
思わず笑ってしまうような奇妙な画像や、ブランドイメージと全く合わない内容。SNS広告の世界では、いま”AIが作ったちょっとおかしな広告”がじわじわと増えているのをご存じですか?
この記事では、Metaが推進するAI広告「Advantage+」が、どのように広告の世界を変えつつあるのか。そして、なぜそれが今、多くの注目を集めているのかを、初心者の方にもわかりやすくお伝えします。
「Advantage+」って何? AIが広告を”勝手に”作る時代へ
Metaの「Advantage+(アドバンテージ・プラス)」とは、簡単に言えば、広告の企画からデザイン、ターゲット設定までを、すべてAIにお任せできるシステムです。
通常、広告を作るには時間も人手もかかります。どんな言葉が響くだろう? どの画像がクリックされやすい? そうした試行錯誤を、AIが一瞬でやってくれるのです。
「これは便利!」と思うかもしれません。実際、多くの企業がこのサービスを利用しています。
しかし、その便利さの裏には、ちょっとした落とし穴も潜んでいました。
AIが作った広告、思ってたのと違う…
2025年10月、ビジネスインサイダーの報道によって、Metaの広告で起きている奇妙な現象が明らかになりました。
例えば、男性向け衣料品ブランド「True Classic」では、30〜45歳の男性をターゲットにした人気の広告が、AIによって勝手に高齢女性の画像に置き換えられていました。マーケティング責任者がXに投稿した画像は、「AIおばあちゃん」として話題になりました。この広告は3日間も掲載され続け、顧客からの指摘で初めて気づいたといいます。
また、ヨーロッパの靴ブランドKirrunaでは、モデルの脚が物理的にありえない角度に曲がった広告画像が生成されました。電動バイク会社Lectricでは、雲の中を飛んでいるような車の画像を含む広告が作られていました(幸いこれは公開前に発見されました)。
これらはすべて、Advantage+がAIによって自動的に生成したものとみられています。
AIは、ユーザーの行動履歴や好みに基づいて最適な広告を出すはず。けれど、AIに完全に任せたことで、かえって「人間らしさ」を失い、見る人に不信感や違和感を与えてしまうケースが増えているのです。
なぜ、こんなことが起きるのか?
AIは、あくまで「データ」と「パターン」に基づいて学習しています。
たとえば、過去に「ベッドの広告に人の顔が入っていたらクリック率が上がった」というデータがあれば、それを”正しい”と判断してしまいます。
さらに問題なのは、Advantage+では広告の表示内容が広告主にも詳細に見えづらくなっている点。加えて、広告主たちは「自動クリエイティブ調整」や「新しいクリエイティブ機能をテスト」といった設定が、一度オフにしても勝手にオンに戻ってしまうと報告しています。つまり、「どんな広告が出ているのか、広告主も知らない」という状況が生じているのです。
マーケティング代理店Flat CircleのCEOは、1億ドル規模の広告費を管理する中で、週に2〜3回、手動でAI機能をチェックして無効化する作業に追われていると述べています。「何度オフにしても、ランダムにオンに戻ってしまう。完全に混乱状態だ」と語っています。
これは、料理を注文したはずなのに、厨房の中身が見えず、何が出てくるかわからないレストランにいるようなもの。出てきた料理が美味しければいいのですが、ときにはとんでもないものが出てきてしまうのです。
広告の未来に必要なのは、「人の目」かもしれない
AIは確かに便利ですし、膨大なデータから導き出される提案は、時に人間の想像を超えることもあります。
しかし、どんなに優れたテクノロジーでも、「誰かの心に届く」ためには、やはり人の目と感性が必要なのかもしれません。
たとえば、誰かにプレゼントを贈るとき。AIに選ばせることもできますが、「その人の好きな色」「今の気持ち」など、細やかな心の機微を汲み取れるのは、やっぱり人間です。
広告もまた、小さなラブレターのようなもの。届けたい誰かを想いながら、丁寧に言葉を選ぶことが、最終的に信頼につながるのではないでしょうか。
おわりに:AIと人間、どちらが「伝える力」を持っているのか?
「AIが広告を作る時代」がすでに始まっています。
でも、その便利さに甘えすぎると、大切な”伝える力”を失ってしまうかもしれません。
Metaの奇妙な広告たちは、単なる失敗ではなく、「テクノロジーとの付き合い方」を考え直す、ひとつのきっかけになるのではないでしょうか。
AIができること、人間にしかできないこと。その境界線を見極めながら、これからの広告のあり方を、私たち一人ひとりが見つめていく必要がありそうです。
今日あなたが見かけた広告は、誰が作ったものでしょうか?
もしかしたら、その裏には、人間の想いも、AIの計算も、どちらも混ざり合っていたのかもしれませんね。
参考:Meta’s AI tools are going rogue and churning out some very strange ads
コメント