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AIが“考える存在”になるには、記憶のアップデートが必要だった。

AI

朝の支度中、ふとスマートスピーカーに話しかけて天気を聞く。
すると即座に「今日は晴れ。最高気温は22度です」と答えが返ってくる。
便利だけど、どこか”会話している”感じは薄い。

たとえば昨日の会話を覚えていて「昨日は傘を忘れたって言ってましたよね。
今日は晴れそうですが、折りたたみ傘は持っておくと安心かもしれません」なんて返されたら、ちょっと驚くし、親しみすら覚えるのではないでしょうか。

実は今、AIの世界で大きな変化が起きています。
「質問に答えるだけのAI」から「自分で考えて行動するAI」への進化です。
しかし、この進化には大きな壁があります。
それが「記憶の問題」なのです。

「自分で考えるAI」とは?

これまでのAIは、質問されたことに答えるだけの「便利な道具」でした。
でも最近のAI、特にChatGPTのような大規模言語モデルは違います。
自分で計画を立てて、複数の作業を順番にこなせるようになってきているのです。

たとえば「新しいノートパソコンを買いたい。おすすめを3つ教えて」と頼んだとします。
従来のAIなら、ただスペックを並べるだけでした。
しかし新しいタイプのAIなら、あなたがこれまでに検索した内容や予算の傾向を覚えていて「あなたらしい選択肢」を提案できるのです。

ただし、ここに大きな問題があります。

AIが「物忘れ」してしまう理由

人間のような賢いAIを作るには「記憶する力」が必要不可欠です。
でも実は、今のAIは記憶がとても苦手なのです。

現在のAIは、会話の内容を一時的にしか覚えていません。
たとえば図書館で本を読むとき、必要なページだけを机に広げて読みますよね。
AIも同じように、今必要な情報だけを「作業机」(専門的にはGPUメモリと呼ばれます)に載せて処理しています。

問題は、この作業机がとても小さくて高価なこと。
会話が長くなればなるほど、たくさんの情報を載せる必要があります。
でも机が小さいので、古い情報は机から落ちてしまう。
または、もっと大きな倉庫(通常のストレージ)に移すしかありません。

倉庫に移した情報を取り出すには時間がかかります。
その間、高価な作業机は何もせず待っているだけ。これではとても効率が悪いのです。

結果として、次のような問題が起きます。
会話が長くなると、昨日話したことを忘れてしまう。
複雑な仕事を頼むと、途中で何をしていたか分からなくなる。
以前の経験を、次の仕事に活かせない。
まるで、毎日記憶をリセットされてしまう友人と話しているようなものです。

画期的な解決策:「中間の記憶場所」を作る

この問題を解決するため、NVIDIA(世界的なAIチップメーカー)が新しいアイデアを提案しました。
それが「ICMS」という技術です。

簡単に言えば「高速だけど小さい作業机」と「大きいけど遅い倉庫」の間に「そこそこ速くて、そこそこ大きい本棚」を新しく作ろう、というアイデアです。

NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏はこう語っています。
「AIはもはや一度きりの質問に答えるだけのものではありません。長い会話を覚え、道具を使って実際の仕事をこなす、知的なパートナーになろうとしているのです」

この「中間の本棚」のおかげで、AIは膨大な量の過去の会話を覚えておけるようになります。
しかも、高価な作業机を無駄に使わずに済むのです。

どれくらい改善されるの?

この新しいシステムの効果は具体的な数字で表れています。

まず、処理速度が最大5倍速くなります。
AIが答えを考える時間が大幅に短縮されるのです。
さらに、使う電力も5分の1に減ります。
これは環境にも優しく、企業のコスト削減にもつながります。

なぜこんなに効率が良くなるのでしょうか?
新しい「本棚」は、AIが次に必要としそうな情報を予測して、あらかじめ作業机の近くに準備しておきます。
これにより、情報を取りに行く時間が大幅に短縮されるのです。

実用化への動き

この技術は、すでに実用段階に入っています。
Dell Technologies、HPE、IBMなど、世界的な大手IT企業が、NVIDIAの技術を使った製品の開発を進めています。
これらの製品は、今年後半には利用できるようになる予定です。

つまり、遠い未来の話ではなく、もうすぐ私たちの身近なところで使われ始める技術なのです。

企業にとっての意味

この新しい記憶システムは、企業のAI活用にも大きな影響を与えます。

従来は、AIの記憶容量を増やそうとすると、高価な機器をたくさん買う必要がありました。
でも新しいシステムなら、比較的安価な機器で大量の記憶を確保できます。
これにより、企業はコストを抑えながら、より賢いAIを使えるようになるのです。

また、複数のAIが大きな記憶スペースを共有できるようになります。
これは、会社の図書館のようなもの。
一人一人が本棚を持つのではなく、みんなで一つの大きな図書館を共有する方が効率的ですよね。

私たちの未来:AIが「相棒」になる日

この技術が広まれば、AIは単なる便利な道具から、本当の意味での「知的なパートナー」へと変わっていきます。

想像してみてください。あなたの仕事のやり方を覚えていて、必要な資料を先回りして準備してくれるAI。
日々の悩みを覚えておいて、適切なタイミングでアドバイスをくれるAI。
過去の会話やあなたの好みをもとに、本当にあなたに合った選択肢を提案してくれるAI。

そんな未来が、思っているよりも早く実現するかもしれません。
私たち人間が経験を通じて学び成長するように、AIも「記憶する力」を手に入れることで、ようやく本当の意味で「考える存在」になっていくのです。

便利さだけでなく、共に成長し、寄り添ってくれる存在としてのAI。
その実現に向けて、技術は着実に進歩しているのです。

参考:Agentic AI scaling requires new memory architecture

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