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提携ではなく買収。製薬大手が選んだ”AI内製化”という賭け

AI

ある日、医師から「がんです」と告げられたとき、人は何を思うのでしょうか。
恐怖、不安、そして「どうしてもっと早く見つけられなかったのか」という後悔。
そんな想いに寄り添い、解決策を見出そうとしているのが、製薬大手アストラゼネカの新たな取り組みです。

その鍵を握るのが、人工知能(AI)です。

AIががん研究を変える?アストラゼネカの新たな一歩

これまでの医薬品開発は、まるで迷路を手探りで進むようなものでした。
膨大なデータを扱いながら、時間と費用をかけて新薬を見つけていく。
そのプロセスには、数十年かかることも珍しくありません。

しかしアストラゼネカは、そんな「時間との戦い」に、AIという強力な味方を迎え入れることを決断しました。
同社は2026年1月、ボストンを拠点とするAI企業Modella AIを買収すると発表。
買収金額は明らかにされていませんが、この決断には「AIを使って研究開発の効率を飛躍的に高める」という強い決意が込められています。

外注ではなく「内製化」。それがもたらすもの

多くの企業がAI導入を外部ベンダーとの提携で進める中、アストラゼネカはAI企業そのものを買収するという道を選びました。

なぜ「内製化」にこだわるのでしょうか?

それは、がん研究という複雑で繊細な分野において「データの質」と「意思決定のスピード」が命だからです。
AI企業を社内に取り込むことで、病理データや臨床情報を深く理解し、迅速に活用することができます。
これは、研究者が直接AIと対話しながら、次の一手を練るようなもの。
まるで、熟練の料理人が自分の厨房で最高の一皿を仕上げるような感覚です。

アストラゼネカのCFO、アラダナ・サリン氏は「腫瘍学の医薬品開発はますます複雑になり、データ量も増え、時間的な制約も厳しくなっています」と語っています。

人間とAIの「共同研究」が始まっている

「AIが研究者の代わりをする」のではありません。
AIは、研究者の「右腕」として働きます。

Modella AIが開発しているAIは、病理画像データを計算機で解析し、それを臨床情報と結びつけることに特化しています。
例えば、生検画像から病気のパターンを見つけ出し「この薬は、こういうタイプのがん患者に効く可能性が高い」といったバイオマーカーの発見につなげることができるのです。

Modella AIの最高商業責任者、ガビ・ライア氏は「腫瘍学の医薬品開発はより複雑になり、より多くのデータを扱い、より時間に敏感になっています」と述べ、アストラゼネカに加わることで、世界中の臨床試験や臨床現場でツールを展開できるようになると語っています。
これは、まさに人とAIが手を取り合う「共同研究」の姿です。

未来の医療は「待たせない」

がんは、1日でも早い発見と治療がカギを握る病です。
もし、AIが研究開発のスピードを何倍にも引き上げることができれば、今までは救えなかった命を救える可能性が高まります。

アストラゼネカのこの挑戦は、「患者を待たせない医療」への一歩でもあります。
サリン氏は、買収について「量的病理学とバイオマーカー発見における当社の取り組みを加速させる」と説明し、データ、モデル、そしてチームを一つの屋根の下に統合することを目指すと語りました。

目標は明確です。
臨床試験のデザインと患者選択に影響を与える決定を下すまでの時間を短縮することです。
例えるなら、これまで馬車で運んでいた薬の開発という荷物を、AIという超高速列車に積み替えたようなもの。
しかも、その列車の運転士と車掌は、人間とAIが一緒に務めるのです。

広がる製薬業界のAI導入競争

アストラゼネカだけではありません。
同じヘルスケア会議では、NvidiaとEli Lillyが最新のAIチップを使った新しい研究所を構築するため、10億ドルの提携を発表しました。

これらの動きは、業界全体でAIへの関心が高まっていることを示しています。
しかし、提携と買収には大きな違いがあります。
提携は実験を加速させることができますが、買収は内部能力の構築に対する長期的な賭けを意味します。
厳格な規制下で運営される企業にとって、そのコントロールは、純粋な計算能力と同じくらい重要なのです。

最後に──医療の未来に希望を灯すAI

AIと聞くと、どこか無機質で冷たい印象を持つ方もいるかもしれません。
でも、アストラゼネカが描く未来はちょっと違います。

そこには「一人でも多くの命を救いたい」という人間らしい願いと、それを支えるテクノロジーの温かさがあります。

サリン氏は以前のアストラゼネカとModellaの提携を「試乗」と表現し、最終的にはModellaのデータ、モデル、そして人材を組織内に取り込みたかったと語りました。
その目的は「高度に標的化されたバイオマーカー、そして高度に標的化された治療薬」の開発を支援することだと述べています。

がんという難敵に立ち向かうこの挑戦は、医療の未来に小さな、でも確かな希望の光を灯しているように感じます。

アストラゼネカのModella AI買収は、まだ始まったばかり。
けれど、そこから生まれる研究成果は、きっと私たちの未来を少しずつ変えてくれるはずです。
サリン氏によれば、2026年はアストラゼネカにとって忙しい年になる見込みで、複数の後期段階の臨床試験結果が様々な治療分野で発表される予定です。
同社は2030年までに年間売上高800億ドルという目標に向けて取り組んでいます。

参考:AstraZeneca bets on in-house AI to speed up oncology research

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