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がん診断の未来が変わる!ただの画像から“見えないタンパク質”を読み解くAI『HEX』とは?

AI

見慣れた染色画像の向こうに、未来が見えるとしたら?

病院でがんの診断を受けるとき、多くの人は「H&E染色スライド」と呼ばれるピンクと紫の組織画像を見たことがあるかもしれません。
医師が顕微鏡をのぞいて診断する、まさにあの画像です。

けれど実は、その画像の奥には、もっと深い「体の物語」が眠っているのをご存じでしょうか?

その物語を読み解くカギが、最新のAI技術であるHEX(ヘックス)です。

H&E画像から”見えないタンパク質”を描き出す、AI「HEX」の誕生

従来、がん組織の中でどんなタンパク質がどこにあるのかを調べるには「CODEX」などの複雑で高価な技術を用いる必要がありました。
これは、50種類以上のタンパク質を同時に可視化できる強力な技術ですが、専門の機器や熟練者が必要で、病院で日常的に使うにはまだ遠い存在です。

そこで登場したのが、HEX(H&E to protein expression)
なんと、普通のH&E画像を読み取るだけで、まるで実際にCODEXで染色したかのような「仮想のタンパク質地図(バーチャル空間プロテオミクス)」を再現するのです。

このモデルは、81.9万枚以上の画像タイルと40種類のタンパク質情報を使って訓練され、肺がん(非小細胞肺がん)を中心とした2,298人の患者データで検証されました。

予測だけじゃない、HEXは「命の選別」を変えるかもしれない

HEXのすごさは単なる画像処理にとどまりません。

実際の患者データをもとにした大規模な検証では、HEXを用いることで、がんの再発リスクの予測精度が22%向上。
さらには、免疫療法への反応を24〜39%精度向上させることができました。

たとえば、免疫療法の標準指標であるPD-L1が高い患者でも、HEXを使えば「実際には効かないかもしれない人」が40%も存在することがわかり、治療法の選択を根本から見直す可能性があるのです。

AIが見つけた”免疫の名場面”とは? 顕微鏡では見えなかった共演

HEXが描く仮想タンパク質地図では「どの細胞が、どの細胞と、どこで共にいるか」まで見えてきます。

たとえば、治療に反応しやすいがんでは、CD8陽性T細胞(攻撃型)とCD4陽性T細胞(司令官型)が同じ場所に集まり、力を合わせているように見えるのです。
一方、反応しにくいがんでは、免疫を抑え込むマクロファージや好中球が集まっている。
これらの空間的な配置が、患者の運命を大きく分けていました。

まるで戦場で、誰がどこに立ち、誰と共に戦っているのか。
その布陣を一枚の画像から読み取れるようになったのです。

“一枚の画像”が未来を変える。HEXがもたらす医療の新しい扉

この記事で紹介したHEXは、夢物語ではありません。
すでに数千人の患者データで検証され、がん診断と治療選択の精度を飛躍的に高める手段として注目を集めています。

そしてなにより魅力的なのは、「すでに手元にあるH&E画像」から新しい情報を引き出せること。
特別な検査も、追加の費用も、特別な機器も必要ありません。
これは、患者への負担を最小限に抑えながら、最大の医療的利益を届けるという、理想に近いアプローチです。

最後に:AIは、医師の目を「拡張」するパートナー

AIが医師に取って代わるのではなく、見えなかったものを”見せてくれる”相棒になる。
HEXはまさにその象徴です。

H&Eスライドという「ただの染色画像」が、AIというレンズを通すことで「命の地図」へと変わる。
そんな未来が、もう現実となりつつあります。

がん診断が「見えるもの」だけに頼らない時代。
HEXは、その扉を開ける鍵になるかもしれません。

参考:AI-enabled virtual spatial proteomics from histopathology for interpretable biomarker discovery in lung cancer

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