「このサイト、探している情報がなかなか見つからない…」
そんな経験、ありませんか?
ネット検索に慣れている人でも、目的の情報にたどり着けずに、いくつものリンクを渡り歩くことがあります。
特に企業のホームページや商品ページって、必要な情報が”どこかにはある”はずなのに、まるで迷路のように感じることがあるんです。
でも、もしWebサイトが「あなたのためだけ」に話しかけてくれたらどうでしょう?
たとえば「こんにちは、何かお困りですか?」「この製品、どんな目的で探していますか?」と、まるで店員さんのように案内してくれるサイト。
そんな未来が、いま静かに始まろうとしています。
Fibrが目指すのは、Webの”接客革命”
2026年2月4日、シリコンバレー発のスタートアップ Fibr AI(ファイバー) が、著名ベンチャーキャピタル Accel からシードラウンドとして570万ドル(約8.5億円)の資金調達を発表しました。
Accelは2024年にも180万ドルのプレシードラウンドを主導しており、今回の追加投資で同社への信頼を改めて示した形です。
今回のラウンドにはWillowTree VenturesやMVP Venturesも参加し、総調達額は750万ドルに達しました。
Fibr AIが取り組んでいるのは「WebサイトにAIエージェントを導入し、ユーザー一人ひとりに最適な体験を提供する」という、これまでのWebの常識を覆すチャレンジです。
静的なページに”魂”を吹き込む
多くのWebサイトは、どれだけ情報が充実していても、基本的には「静的」です。
つまり、誰が見ても同じコンテンツが表示されます。
ですが、Fibr AIはそこにAIを加えることで、ユーザーごとにパーソナライズされた会話型体験を提供しようとしています。
たとえば、以下のような未来を想像してみてください。
ネットショップで「母の日のプレゼントを探しています」と入力すると、AIが用途に合わせて商品を提案してくれる。
サービスページで「初心者でも使えるか不安です」と伝えると、AIが優しくステップバイステップで案内してくれる。
それはまるで、無機質なWebページが”接客係”へと進化するようなもの。
Fibr AIはこの変化を実現するプラットフォームを構築しています。
なぜ今、Fibr AIが注目されているのか?
実はこの「AIエージェントによるWeb体験の変革」は、ここ数年で急速に注目されている分野です。
ChatGPTをはじめとする生成AIの発展により、人と自然な会話ができるAIが現実のものとなった今、その技術をWebに応用する動きが加速しているのです。
Fibr AIの強みは、「エージェントがただ会話するだけでなく、リアルな業務の一部をこなせること」です。
つまり、AIがただ質問に答えるのではなく、訪問者の意図を推測し、コンテンツのバリエーションを生成し、リアルタイムで最適化を続けるという、まさに”デジタルスタッフ”として機能するのです。
共同創業者でCEOのAnkur Goyalは「私たちはソフトウェアであり、エージェンシーは私たちが展開するエージェントの労働力です」と語ります。
この仕組みにより、Fibr AIは年間数十回の実験ではなく、数千の実験を並行して実行できるのです。
「AIは人間の仕事を奪う」ではなく、「人間の仕事を支える」存在へ
AIと聞くと、「人間の仕事を奪う存在」というイメージを抱く方もいるかもしれません。
でも、Fibr AIが目指しているのは、人にしかできない”創造”や”感情”に集中できる環境を整えることです。
従来、大企業では、ますますパーソナライズされる広告と、ほとんど変化しないWebサイト体験とのギャップを埋めるために、パーソナライゼーションソフトウェア、エンジニアリングチーム、マーケティングエージェンシーを組み合わせて対応してきました。
しかし、このモデルは遅く、コストが高く、スケールさせることが困難でした。
Fibr AIは、この人的リソースに依存する運用モデルをもはや機能しないと考えています。
代わりに、自律型AIエージェントが意図を推測し、バリエーションを生成し、ページをリアルタイムで継続的に最適化します。
これはまさに、「AIが人の代わりになる」のではなく、「AIが人の味方になる」世界です。
Fibr AIのこれからと、私たちのこれから
2023年初頭にGoyalとPritam Royによって創業されたFibr AIは、当初は導入が遅々として進みませんでした。
最初の2年間は1〜2社の顧客しかいなかったといいます。
企業がこのアプローチを評価するのに時間がかかったためです。
しかし昨年から状況が変わり始めました。
銀行やヘルスケアプロバイダーなどの大手米国企業での採用が進み、現在の顧客数は12社に達しています。Goyalは「私たちはインフラの後付けレイヤーです。
一度セットアップされれば、誰もそれについて再び考えたくありません」と説明します。
この特性により、Fibr AIは大企業と3〜5年の長期契約を結んでいます。
今回、Accelが追加投資を決めたという事実は、Fibr AIが単なるアイデア先行のスタートアップではないという強い証でもあります。
AccelのパートナーであるPrayank Swaroopは、「今日の広告は1対1ですが、ユーザーがWebサイトに到着すると1対多になります。
異なるオーディエンス向けに何百もの広告を作成できますが、それらはすべて同じページに着地します」と指摘します。
Fibr AIがこのダイナミクスを1対1のパーソナライゼーションに変える能力を持つことが、投資の決め手となったのです。
“探す”から”つながる”時代へ
この技術がさらに進化すれば、数年後には「Webサイトを自分で”探す”」のではなく「Webサイトと”対話する”」ことが当たり前になるかもしれません。
Fibr AIは、AdobeやOptimizelyといった既存企業が長年支配してきた分野に参入しています。
しかし、GoyalとSwaroopは、これらのプラットフォームは構築方法や販売方法によって制約を受けており、マーケティングエージェンシーやエンジニアリングチームに設定と運用を依存していると指摘します。
このモデルでは、迅速に動いたり実験をスケールさせたりすることが難しいのです。
Goyalによれば、Fibr AIは今年末までに年間500万ドルの経常収益と約50社の企業顧客を目指しています。
新たな資金は、米国での営業・顧客対応チームの拡大と、インドでの技術基盤の構築継続に充てられる予定です。
サンフランシスコに本社を置く同社は、ベンガルールにもオフィスを構え、約23名の従業員のうち17名がインドに、残る6名が米国に配置されています。
「情報にたどり着く」のではなく「情報が自分に寄り添ってくれる」。
Fibr AIの取り組みは、そんな未来を少しだけ先取りしているように感じられます。
インターネットが”冷たい情報の倉庫”から”温かい会話の場”へと変わっていく時代。
その入り口に、私たちは立っているのかもしれません。
もしあなたがこれからWebサイトを作る側になるなら、あるいは、毎日ネットで何かを調べている生活者の一人なら、Fibr AIがつくる新しい世界に、少しだけワクワクしてみてください。
参考:Accel doubles down on Fibr AI as agents turn static websites into one-to-one experiences
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