あれ、文章の流れが…?
あなたはこんな経験、ありませんか?
「この文章、なんだか読みにくいな…」
そう思ってよく見ると、文章の途中に見慣れない「――(エムダッシュ)」が妙に多用されている。
しかも、前後の文が妙にぶつ切りで、なんとなく機械っぽい。
実はそれ、ChatGPT が生成したテキストかもしれません。
実際、数多くのユーザーが「ChatGPTってエムダッシュ(—)使いすぎじゃない?」と指摘してきました。
この問題は、ユーザーが「エムダッシュを使わないで」と明示的に指示しても、ChatGPT が従わないことで、長い間 OpenAI を悩ませてきました。
そして――ついに OpenAI が、この小さくて大きな問題への対処法を発表したのです。
エムダッシュって何者?
まず、ちょっとだけ「エムダッシュ」について説明しておきましょう。
エムダッシュ(—)とは、文の途中で話題を切り替えたり、強調したい部分を区切ったりするときに使う記号です。
日本語で言えば「――」や「……」のような、間や余韻を演出する記号に近いかもしれません。
たとえば――こんなふうに使われます。
けれども、これが頻出しすぎると、文章全体がブツブツと途切れて読みにくくなります。
しかも、あまりに頻繁に出てくると「これ、本当に人が書いたの?」と不信感すら抱かせる原因にもなっていました。
なぜ ChatGPT はエムダッシュを多用していたのか
では、なぜ ChatGPT はそんなにエムダッシュが好きだったのでしょう?
OpenAI によれば、その原因は出力文を整理する際の内部的なアルゴリズムの「癖」にあったそうです。
AIは大量のテキストを学習していますが、その中で「人間の書く文章には、エムダッシュがよく使われている」と誤って解釈してしまった可能性があります。
でも、実際には人間はそんなにエムダッシュを使いません。
特に日本語では使う場面はかなり限られています。
もちろん「私はAIが流行る前からエムダッシュを使っていた」という人もいます。
しかし、チャットボットがその使用を避けられないことで、たとえAIが生成したものでなくても、エムダッシュは「疑わしい記号」として見られるようになってしまいました。
これはまるで、外国人が日本語を学ぶときに「です・ます」が丁寧だと教わりすぎて、どんな場面でもひたすら「〜でございます」を使ってしまうようなもの。
丁寧すぎて逆に不自然。
そんな状況がAIの文章で起きていたのです。
そして、ついに対処法が発表された
OpenAI CEO のサム・アルトマン氏が 2025 年11月14日、この問題への対処法を発表しました。
ただし、完全に自動で修正されたわけではありません。
OpenAI によれば、ChatGPT の「カスタム指示」機能を使って「エムダッシュを使わないでください」と明示的に指示すれば、ようやくその指示に従うようになったとのこと。
アルトマン氏はこれを「小さいけれど嬉しい勝利」と表現しています。
つまり、デフォルトでエムダッシュの使用が減ったわけではなく、ユーザーが設定で指示することで、その頻度をコントロールできるようになったということです。
小さな記号が映し出す、大きな進化
このエピソードは、ただの「句読点の使いすぎ問題」に見えるかもしれません。
けれども、その背景にはAIと人間の距離をどう縮めるかという、深いテーマが横たわっています。
私たちがAIに求めているのは、ただ便利な回答ではなく「違和感のない対話」や「自然な文章」です。
小さな記号ひとつで「なんだか不自然」と感じてしまうのは、私たち人間がいかに「言葉のリズム」に敏感かを物語っています。
そして、それに耳を傾け、改善を重ねるAIの姿は、まさに「機械が人間に歩み寄っている」象徴なのかもしれません。
最後に――言葉は、橋になる
ChatGPT のエムダッシュ問題は、些細なようでいて、とても人間らしい出来事でした。
言葉とは、ただの情報伝達手段ではなく、心と心をつなぐ橋です。
その橋がスムーズであるために、私たちが感じた違和感が改善されたことは、AIとの未来にとって大きな一歩です。
もしかしたら数年後、私たちは「昔の ChatGPT ってエムダッシュばっかり使ってたよね」なんて笑いながら振り返るのかもしれません。
でもその笑いの裏には、人間の感性と、AIの進化がしっかりと手を取り合った記録があるのです。
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