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世界45機関が証明! あなたの体に潜む「見えない免疫戦士」をAIが発見、メラノーマ生存率を劇的改善

AI

――メラノーマ診断に革命を起こす人工知能の挑戦

ある日、あなたの体に「小さな異変」が生まれたとします。
見た目ではわからないけれど、体の中で免疫細胞たちが黙々とその異変に立ち向かっている──それが「がんとの最初の闘い」です。

この見えない闘いを、私たちはどう見抜き、どう活かすことができるのでしょうか?
そんな問いに、一つの答えを提示したのが、今回ご紹介する最新の研究です。

見えないヒーロー「TILs」とは?

まずは少しだけ専門的な話をやさしく説明しましょう。

「TILs(ティルズ)」とは、Tumor-Infiltrating Lymphocytes(腫瘍浸潤リンパ球)の略で、がん細胞の周りに集まってくる免疫細胞のこと。
彼らは、ちょうど火事現場に駆けつける消防士のように、がんと戦う最前線に立っています。

特にメラノーマ(悪性黒色腫)という皮膚がんでは、この TILs の「量」が、治療の成果や生存率に大きな影響を与えることが知られています。
つまり、TILs が多ければ多いほど、体ががんに対してきちんと防衛している証拠になるのです。

でも…その「数え方」は大丈夫?

これまで TILs の評価は、病理医と呼ばれる専門医が顕微鏡でスライドを見ながら「目で見て」行ってきました。
ただし、この方法には大きな課題があります。
それは、人によって評価がバラバラになるという点。

たとえば、ある医師が「これは TILs が多い」と判断しても、別の医師は「いや、少ない」と言うかもしれない。
この不一致が、診断や治療の決定を難しくしてしまうこともあるのです。

AIが「第二の目」になる日

そんな中、世界45の医療・研究機関から98人の参加者が参加した大規模研究が発表されました(Aung ら, 2025年 )。
この研究の主役は、最新の人工知能(AI)による TILs の評価システムです。

研究チームは、60枚のメラノーマ組織画像を用いて、人の手による評価と、AIによる自動評価の精度と一貫性を比較。
その結果、AIによる評価は再現性(=どの人が使っても同じ結果になるか)において、従来の方法を大きく上回ったのです。

  • AIの一致度(ICC 値):0.91〜0.94(ほぼ完璧な一致)
  • 人による一致度:sTILs スコアで 0.60、Clark 分類では 0.44 とさらに低い

たとえるなら、AIは「決してブレない物差し」。
それに対して人の評価は、気温や疲れ、経験値で伸び縮みする「やわらかい定規」だったのです。

そしてAIは未来をも予測する

さらに注目すべきは、AIで算出された TILs の量が、患者さんの予後(生存率)と強く関連していたこと。

あるスコアでは、TILs が多いと診断された患者は、そうでない患者に比べてがんで亡くなるリスクが半分以下だったのです。
これは、AIが「ただ数えるだけ」ではなく「未来を予測する力」を持ち始めていることを意味します。

AIは医師を超えるか? それとも支えるか?

この研究は、単に「AIが人より優れている」と言いたいわけではありません。
むしろ重要なのは「AIが、医師のパートナーとして使える確かな道具になった」ということです。

医師がAIの助けを借りて、より正確に、そして迅速にがんの診断を行えるようになる。
それはつまり、患者さんにとっても最善の治療をより早く受けられるということ。

おわりに:見えないものを見る力を、AIとともに

がんとの戦いは、いつも見えにくい場所で始まります。
でも、見えないからといって、希望まで見失ってはいけません。

AIという新しい「目」を手に入れた今、私たちはもっと早く、もっと正確に、体の中の SOS をキャッチできるようになりました。

TILs という小さな免疫の戦士たちの働きを見逃さず、そこから未来を予測する──それは、まさに「がん治療の羅針盤」とも言える進歩です。

ただし、この研究は過去の症例を用いた後向き研究であり、実際の臨床現場での有用性を示すには、さらなる前向き研究が必要です。
それでも、AIによる TIL 評価の高い再現性と予後予測能力は、将来の個別化医療の基盤となる重要な成果といえるでしょう。

これからの医療は、人とAIが力を合わせて進む新しい時代へと歩み出しています。

参考:Pathologist-Read vs AI-Driven Assessment of Tumor-Infiltrating Lymphocytes in Melanoma

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