試験前夜のあの数学問題を覚えていますか?
「どうしてこんな問題、解けないんだろう…?」
そんなふうに夜遅くまで教科書とにらめっこした日々、誰にでも一度はあったのではないでしょうか。
特に、数学や科学の問題は、どこから手をつければよいのか分からず、焦りばかりが募る──そんな経験。
けれど、もしあのとき、隣に「論理の迷路をスイスイと進む案内人」がいてくれたなら?
2025 年5月14日、DeepMind が発表したAIシステム「AlphaEvolve」は、まさにそんな「知のナビゲーター」のような存在かもしれません。
このAIは「機械的に採点可能な解決策」を持つ問題──特にコンピューターサイエンスやシステム最適化の分野──を高い精度で解く力を持っています。
AlphaEvolve は、考える。しかも、自己評価しながら
AIというと、大量のデータを処理する「計算マシン」のように思われがちです。
しかし AlphaEvolve は、それとは異なる次元の知性を持ち合わせています。
このAIの核心は、巧妙な「自動評価システム」です。
AlphaEvolve は、最先端の Gemini モデルを使用して、問題に対する可能な答えを生成し、批評し、答えのプールに到達します。
そして、それらの答えを自動的に評価し、精度についてスコアリングを行います。
問題を前にしたとき、AlphaEvolve はまず、提示された問題(指示、方程式、コードスニペット、関連文献を含む)を分析します。
そして、解決策をアルゴリズムとして記述し、自己評価が可能な問題に限って、最も正確な解答を導き出すのです。
実験では、約50の数学問題において、AlphaEvolve は 75% の確率で最良の既知の解答を「再発見」し、20% のケースでは改善された解決策を発見しました。
AIが最適化する日──実用的な応用の広がり
AlphaEvolve の誕生は、単に「賢いAIが出てきた」以上の意味を持っています。
実際、Google のデータセンターの効率向上やモデル訓練の高速化といった実用的な問題でも成果を上げています。
例えば、AlphaEvolve は、平均して Google の世界的な計算リソースの 0.7% を継続的に回復するアルゴリズムを生成しました。
また、Gemini モデルの訓練に要する時間を1%短縮する最適化も提案しました。
研究者にとっては、時間を節約しながら、より重要な仕事に集中できるようになる──それが DeepMind が主張する AlphaEvolve の価値です。
🔮 「知る」とは何か──人とAIの境界線を見つめて
AlphaEvolve は画期的な発見をしているわけではありません。
実際、TPU AI アクセラレータチップの設計改善など、他のツールで既に発見されていた改善点を見つけることもありました。
しかし、AIが自己評価を行いながら問題を解決していく姿は、人類の知性とAIの協働の新たな形を示しています。
私たちは今「知る」とはどういうことかを改めて問われています。
AIが導き、人が問い、共に歩む未来。
その先には、きっとこれまでにない最適化の地平が広がっていることでしょう。
──AIと科学、そして知の進化。その可能性は、まだ始まったばかりです。
参考:DeepMind claims its newest AI tool is a whiz at math and science problems
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