逆境の中でも歩みを止めない企業には、きっと”強さ”の理由がある。
私たちの毎日に欠かせないスマートフォンやテレビ。
中でも「サムスン」は、その名前を知らない人のほうが少ないでしょう。
しかし、2025 年にサムスンがどんな逆風に立ち向かい、どのように新たな時代の扉を開いたか――その裏にある「AI戦略の革新」については、まだあまり知られていないのではないでしょうか。
この記事では「半導体不況」という厳しい状況をものともせず、むしろ過去最高の収益を記録したサムスンの秘密に、わかりやすく迫っていきます。
半導体不況、それでも過去最高収益――その理由とは?
2025 年、サムスンは困難な局面に直面していました。
世界的に「半導体市場」が冷え込み、業界全体が売上減に悩む中、通常であれば大企業といえども足踏みしてしまうところです。
けれど、サムスンは違いました。
なんとこの逆風の中でも、2025 年第1四半期に過去最高の収益を記録したのです。
具体的には、791,400 億ウォン(約 554 億ドル)の売上高を達成し、前年同期比で 10% 増加しました。
その大きな原動力となったのが「AI(人工知能)」を軸に据えた経営戦略でした。
特に生成AI技術に大きく舵を切ったことで、スマートフォン部門が好調となり新たな市場を見事に開拓したのです。
“AI中心企業”への本気の変革
サムスンは単なる「家電メーカー」ではなくなりつつあります。
生成AIを活用した新製品の開発はもちろん、社内の業務効率化にもAIを導入するなど、会社全体をAIで再構築しようとする「本気の取り組み」が進められています。
研究開発への投資も 2025 年第1四半期に前年同期比 16% 増の9兆ウォンに達し、過去最高の年間 R&D 支出を予定しています。
たとえば、フラッグシップの Galaxy S25 シリーズでは、Galaxy AI と呼ばれるAI機能を搭載し、より自然に、直感的に操作できるようになりました。
これはまさに「未来の暮らし」が今、私たちの手の中にあるという実感です。
まるで、一人ひとりの生活に”AIの執事”がつくような世界――そんな未来をサムスンは見据えています。
「作る」から「育てる」へ。AIがもたらすビジネスの転換点
これまでは、製品を”作って売る”ことが企業のビジネスの中心でした。
しかしサムスンのAI戦略は、AIを通じて「ユーザーとの関係を育てていく」ことを重視しています。
AIが学習し、ユーザーの使い方を理解し、製品がどんどん”賢く”なる――そんな風に、製品が進化し続けることで、サムスンはユーザーとの”長いお付き合い”を実現しようとしているのです。
これこそ、モノから体験へのシフト。
今、サムスンは「技術と人間の共生」という新しい価値を打ち出し、ビジネスそのものを再定義しているのです。
逆風の時こそ、新しい価値が生まれる
私たちはときに、外部環境の変化に振り回され、自信を失いそうになることがあります。
サムスンは現在、半導体部門で苦戦している一方、モバイルエクスペリエンス(MX)事業部は4年ぶりの最高レベルとなる37兆ウォンの連結収益と 4.3 兆ウォンの営業利益を記録しました。
グローバルな貿易摩擦や地政学的緊張という不確実性に直面していますが、サムスンのように、逆風を「飛躍のチャンス」ととらえ、変革を恐れずに前に進む姿勢からは、どんな時代にも通じる大切な学びがあるように思えます。
AIという新しい波を、どう乗りこなしていくか。
サムスンの事例は、これからの働き方やビジネスのヒントにあふれています。
さいごに:AIの未来は、私たち自身の未来
AIはもはや特別な技術ではありません。
それは、スマートフォンやテレビ、家の中の家電にまで、静かに、しかし確実に息づいています。
2025 年の残りの期間、サムスンは「Awesome Intelligence」を Galaxy A シリーズに導入したり、第2四半期に Galaxy S25 Edge を発売するなど、さらなるAIスマートフォンラインナップの拡大を計画しています。
また、後半にはAIユーザーエクスペリエンスを強化した折りたたみスマートフォンラインアップも発表する予定です。
サムスンの挑戦は、そんな未来がもう”すぐそこ”まで来ていることを教えてくれました。
そして何より「困難な時こそ、変化を恐れずに進もう」というメッセージは、私たち一人ひとりの心にも響くものです。
今日から私たちも、自分の暮らしや仕事に、ほんの少しAIの視点を取り入れてみる――そんな小さな一歩が、未来を変えるかもしれません。
参考:Samsung AI strategy delivers record revenue despite semiconductor headwinds
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